フェアウェル / The Farewell

フェアウェル / The Farewell

『フェアウェル』(原題:The Farewell)とは、ルル・ワンが監督・脚本を手がけ、オークワフィナが主演を務めた2019年のアメリカ合衆国のドラマ映画である。ワン監督自身が2017年にラジオ番組で語った実体験に基づくエピソードを原点としており、がんに冒された祖母と再会することになった一族の葛藤や絆を描いている。
物語の主人公はニューヨークで暮らすビリー・ワン。ある日、中国の長春で暮らす祖母・ナイナイが末期の肺がんで余命わずかであるという知らせを受ける。一族は医師と結託し、本人には真実を伏せて「良性腫瘍である」と嘘をつくことを選び、従弟の結婚式を口実に長春へと集結して最後の思い出を作ろうとする。ニューヨークに留まるよう言いつけられたビリーだったが、ナイナイに真実を隠し続けることへの矛盾や苦悩に耐えかねて長春へと向かい、東洋と西洋の文化の間で揺れ動きながら家族のあり方と向き合っていく。
サンダンス映画祭でのプレミア上映を経てA24が全米配給権を獲得し、限定公開では異例の好成績を記録するなど大きな注目を集めた。批評家からも絶賛され、Rotten Tomatoesでは批評家支持率99%という高評価を獲得している。
主演を務めたオークワフィナは第77回ゴールデングローブ賞で主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、アジア系俳優として同部門の歴史的快挙を成し遂げたほか、インディペンデント・スピリット賞では作品賞を受賞するなど国内外の映画賞で高い評価を得た。

フェアウェル / The Farewellのレビュー・評価・感想

フェアウェル / The Farewell
9

移民ファミリーの愛と葛藤の中で揺れ動く女性の成長物語。

NYで物書きを志すアラサー女子ビリーが、従兄弟の結婚式の為に久方ぶりに中国長春(満洲時代の首都)を訪れる。実は結婚式というのは後付けで、ファミリーが集まる本当の理由は、ナイナイ(おばあちゃん)が肺ガンのステージ4だからなのだった。中国ではよっぽどの事が無い限り本人には告知をしないという。アメリカ育ちのビリーにとってそれは誠実ではなく、本人に知らせた方が良いと思っており、周りをハラハラさせてしまう。洋の東西の考え方や習慣の違いに戸惑いながらも、遠く離れていてもよく電話をくれて、個性の強い彼女を可愛がってくれたナイナイに対する気持ちは溢れんばかり。そんな悩めるビリーを、NYクイーンズ出身のコメディエンヌ&ラッパーのオークワフィナ(Awkwafina、「クレイジー・リッチ」でも好演)が繊細かつ真摯に演じており、アジア系俳優初のゴールデングローブ賞、主演女優賞を見事受賞。
ナイナイの長男は若い頃日本へ、次男(ビリーの父親)はアメリカへ渡り、日本育ちの従兄弟はアイコと結婚という設定に、「落地生根」以前、横浜中華街萬珍樓の林兼正さんが何かのインタビューで言っていた、という言葉をふと思い出した。けれどアジアか西洋か、その狭間で生きる事の葛藤というだけでなく、ファミリーの問題はある意味ユニバーサルで、だからこそ単館上映だったのが口コミでじわじわと広がったのに違いない。そして出来たての水餃子や葱油餅が思わず食べたくなってくる作品。