ひねもすのたり日記

ひねもすのたり日記のレビュー・評価・感想

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ひねもすのたり日記
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83歳のちばてつやが過去と現在を行ったり来たり

ちばてつやの久しぶりの連載。タイトルは「ひねもすのたり」(一日中ゆったり)ですが、全体としてはそんなにゆったりしている日常ではないかも。満州で迎えた戦中戦後、漫画家として駆け出しだった頃、働き盛りの時代と現在の話がいったりきたりし、基本的に1話完結のエッセイマンガになっています。
虫の妄想にとらわれたけどキャッチボールで全快した話(運動不足からなる神経症だった)とか、満州で知り合いの中国人の除さんに屋根裏にかくまわれた日々、満州からの引き揚げ船の上であと少しで日本にたどりつくのに力尽きてしまった友達の話など、ファンなら他の作品で知っている話も再掲されていますが、あらためてまとめて読めて、現在のちば先生の状況とからめて知ることができるのはうれしいところ。
線は少し太かったり震えているところもありますが、往年のデッサン力でしっかりとかけており、また全ページカラーなのがすばらしいです。
細かいことですが、奥さんをいつまでも若々しく描いているのも愛情を感じます。
最近はゆるいエッセイマンガが多いですが、やはり重鎮の作品は違います。しっかりとしたエッセイマンガを読みたい人、昭和の漫画をとりまく状況を知りたい人におすすめです。