若おかみは小学生!

若おかみは小学生!のレビュー・評価・感想

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若おかみは小学生!
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子供向けと侮るなかれ!両親を失った少女の心の傷と成長を丁寧に描く傑作アニメーション

累計発行部数300万部を誇る人気児童文学シリーズをアニメ映画化した作品です。
交通事故で両親を亡くした小学6年生の女の子「おっこ」は祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られ、若おかみの修行を始めることに。宿に住み着く幽霊やライバル旅館の跡取り娘や宿を訪れるお客との出会いを通して、おっこは少しずつ成長していく…。
映画冒頭で思いっきり事故のシーンが描かれますが、これが主観視点で書かれていて本当に怖いし、びっくりしました(開幕3分で人生ハードモード)。
そんな悲しい事故で両親を亡くしたおっこちゃんですが、事故後は「春の屋」に引っ越すところまで時系列が飛ぶので、両親の死に泣き叫び取り乱すシーンなどは描かれていません。
その後、旅館で働いている時も、学校に行っている時も、親を亡くしたばかりで辛いはずなのに、極めて気丈に生きているのです。うじうじ泣かないし、暗くもならない。
その代わり、常に両親との優しい過去を思い出している。現在のシーンからシームレスに両親が生存していた回想に入ったりするので、まだ全然心の整理がついていないんだな…というのが伝わってきます。表面上はあんなに元気に振る舞っているのに。わざとらしく泣かせてくる同情を誘う演出ではないところがグッときます。
そんな健気なおっこちゃんにクライマックスで起こることが....。小学生の女の子になんて選択を迫るんだと鑑賞中は胃が締め上げられました。子供向けだと敬遠せずに是非見て欲しいです。親世代だからこそ刺さる部分も多いと思います。お子様がいる方は是非親子で!!
また、ジブリを彷彿とさせる画面の美しさ、描写の丁寧さも見どころです。
板前さんの料理シーンで包丁に切っている食材が写り込んでいたり、旅館の中で会った女性のそばかすが外出した時に消えていたり(化粧描写)と描写には感動しました。シンプルにアニメーション作品としても秀逸です。