望み

望み

『望み』とは、雫井脩介の長編小説、およびそれを原作とした映画作品である。電子小説誌『文芸カドカワ』(KADOKAWA)2016年1月号から7月号に連載され、2016年9月5日に単行本が発売された。2019年4月24日には角川文庫版が発売されている。第七回山田風太郎賞の候補作となり、「週刊文春ミステリーベスト10」2016年国内部門では第9位にランクインした。思春期の息子の友人が遺体で発見され、事件に関わり行方不明となった息子を巡って「加害者か、それとも被害者か」と葛藤する夫妻の心理を描く。
埼玉県戸沢市で暮らす建築家の石川一登(いしかわ かずと)と校正者の妻・貴代美(きよみ)は、高校1年生の長男・規士(ただし)、中学3年生の長女・雅(みやび)とともに幸せな生活を送っていたが、規士がサッカー部を怪我で退部して以降、外泊が増えるなど不安定な様子を見せ夫婦を不安にさせていた。9月の連休中、規士が「悪いけど、いろいろあってまだ帰れない」というメールを最後に連絡を絶った夜、市内で殺人事件が発生する。放置された車のトランクから高校生・倉橋与志彦(くらはし よしひこ)の遺体が発見され、規士と親交があったことから警察が事情聴取に訪れる。さらに、事件現場から逃走した少年は2人であるのに対し、行方不明の少年は規士を含めて3人いることが判明する。マスコミによる報道や周囲からの嫌がらせが激化し加害者家族のように扱われるなか、息子の無実(被害者であること)を信じたい父の一登と、たとえ殺人犯であろうとも生きていてほしいと願う母の貴代美の思いが交錯していく。
2020年10月9日には堤幸彦監督、堤真一主演で実写映画が公開された。映画版では原作から変更され、季節が秋から冬に移されており、冬休みおよび年末年始の間で物語が展開される。本作の出演により、石川規士役の岡田健史が第44回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した。

望みのレビュー・評価・感想

望み
10

家族それぞれの葛藤が切なくて苦しすぎる

原作は雫井侑介の同名小説『望み』。母、石川貴代美を石田ゆり子、父、石川一登を堤真一、長男、石川規士を岡田健史、長女、石川雅を清原果耶が演じた話題のサスペンス映画である。
帰ってこない規士を心配する家族に届いた事件のニュース。まさかと思いながらも、一向に連絡のつかない規士を案じる家族。少しずつ集まってくる情報は、規士が友人を殺したのではないかという信じられないものばかりだった。報道されるのは、規士が事件に関わっており、あたかも犯人なのではないかと思わせる内容。世間も規士は殺人を犯して逃走していると信じるのだ。
そんな中、1人のジャーナリストが貴代美に近づき、「規士は被害者かもしれない」と言ってきた。一登は、息子が殺人犯であることを否定する。しかし、殺人犯ではない=殺されている可能性が高い。雅は「兄に生きていて欲しいが、殺人犯の妹となれば、自分の人生は終わる」と考え悩む。貴代美は「殺人犯であろうとも、生きていて欲しい!」という、その一心で苦しむ。家族の葛藤が浮き彫りになってゆき、それぞれの立場で悩み葛藤し、苦しむ姿は観ているこちらの心を揺さぶる。そして、いなくなった規士も、家族を思い、友達を思う気持ちにあふれていた。
どうか、殺人犯でも生きていて欲しいという願いと、殺されていても殺人犯であって欲しくないという思い。果たして規士は殺人犯なのか、それとも被害者なのか。
最後まで生死が分からない極限の状態の家族の姿は、切なくて苦しいの連続。サスペンスドラマということだったが、この映画はヒューマンドラマ。涙なくして観ることはできない、そんな映画だった。

望み
8

もしも自分の家族の身に起こったら…

たとえ加害者であっても生きていてほしいと望む母親。たとえ被害者であっても、無実だと信じる父親。
それぞれの「望み」の対峙の描き方がとてもリアルでとにかく苦しかった。
自分が親の立場ならどう思うのか。何を望むのか。
誰にでも起こりうる、他人事ではないことだからこそ、色々と考えさせられる作品。
ストーリのテンポも良いので、ストレスなく見ることができた。

そして俳優陣の演技が自然でとても良い。中でも息子役の岡田健史さんは、登場シーンは少なくセリフもあまりないものの存在感が凄かった。
男子高校生ならではのギスギスした親との距離感、しかし本当は家族のことを大切に思っている心優しい青年をうまく表現している。
娘役の清原果耶さんも、葛藤の表現の仕方が素晴らしかった。

子供がいない私の個人的な意見は、この映画の父親の望みに共感した。
たとえ被害者であっても、生きて会えなかったとしても、無実であってほしい。
子供の名誉と、今後の家族の生活のためにも。
しかし、自分に子供ができたらまた違った見え方になるのだろうと思う。
そんなことを考えながら見ていたら、涙が止まらなくなった。
子供がいるひとにもいないひとにも、是非見てほしい映画。

望み
8

どっちがいいのか、わからない。

すごく怖い話でした。一体自分の子供は加害者なのか、被害者なのか。どっちを望むのかと聞かれた時、私ならどうだろうかと考えてしまいます。映画の中だと両親だけじゃなく妹もいて、彼女の気持ちにもグッときました。受験なのに、もう今までの日常は戻ってこなくて、受験しても意味がない気がしてっていうのがすごくわかります。彼女にしてみれば兄だし、余計にいろいろと思うところもあったんじゃないかなと思います。また、マスコミたちの勝手な報道にもイライラしました。でも実際そういうもので、同じ人のことなのに彼が被害者か加害者かで全然報道って違うよなって感じです。犯罪モノの映画はたくさんありますが、この映画は加害者側、被害者側、どちらの立場についても描いていて、人間の心の闇が描かれていた気がしました。真実を知ったとき、それをよかったと思ってしまうのはなんて怖いことでしょう。両親役が堤真一さんと石田ゆり子さんで、どちらも悲哀感がすごくてさすがって感じでした。石田ゆり子さんはお母さんにちゃんと見えるんだけど、美しくて、こういう風に年をとりたいってなりました。

望み
9

日常に潜む事件に何を望むのか

幸せを絵に描いたような普通の4人家族に訪れた事件。母は「とにかく息子が生きていてくれれば、事件の犯人でもかまわない」と望み続けます。父は「息子が加害者ではなく被害者であってほしい」と望みます。妹は「両親に自分のことを見てほしい」と望みます。
それぞれの望みがバラバラで絡み合い、家族だからこそ愛憎が入り乱れるところが、胸を締め付けられるようでした。
おばあちゃんが沢山のごちそうを抱えてきて、家族に食べさせ「覚悟を決めなさい」と語るところは、人生の先輩としての潔さと、何歳になっても娘を思う母心を感じました。私自身の母は他界していますが、「母が生きていて私がこのような事件に巻き込まれたら、きっと同じようにしてくれるだろう」と強く思いました。
ラストで「しっかりした子ほど親を心配させまいと思う」という刑事さんの言葉に、大人へのSOSの出し方を子供には教えておく必要があると思いました。未来ある少年が命を失ってしまい、親よりも早く亡くなってしまうということは、本当に痛ましいことです。
そして、人への誹謗中傷を簡単にするべきではないと思います。正義の側に立って加害者を非難しても、社会は良くならないと思いました。何が正しいかを一人一人の心にしっかり聞いて行動することが、私の望みです。