家族それぞれの葛藤が切なくて苦しすぎる
原作は雫井侑介の同名小説『望み』。母、石川貴代美を石田ゆり子、父、石川一登を堤真一、長男、石川規士を岡田健史、長女、石川雅を清原果耶が演じた話題のサスペンス映画である。
帰ってこない規士を心配する家族に届いた事件のニュース。まさかと思いながらも、一向に連絡のつかない規士を案じる家族。少しずつ集まってくる情報は、規士が友人を殺したのではないかという信じられないものばかりだった。報道されるのは、規士が事件に関わっており、あたかも犯人なのではないかと思わせる内容。世間も規士は殺人を犯して逃走していると信じるのだ。
そんな中、1人のジャーナリストが貴代美に近づき、「規士は被害者かもしれない」と言ってきた。一登は、息子が殺人犯であることを否定する。しかし、殺人犯ではない=殺されている可能性が高い。雅は「兄に生きていて欲しいが、殺人犯の妹となれば、自分の人生は終わる」と考え悩む。貴代美は「殺人犯であろうとも、生きていて欲しい!」という、その一心で苦しむ。家族の葛藤が浮き彫りになってゆき、それぞれの立場で悩み葛藤し、苦しむ姿は観ているこちらの心を揺さぶる。そして、いなくなった規士も、家族を思い、友達を思う気持ちにあふれていた。
どうか、殺人犯でも生きていて欲しいという願いと、殺されていても殺人犯であって欲しくないという思い。果たして規士は殺人犯なのか、それとも被害者なのか。
最後まで生死が分からない極限の状態の家族の姿は、切なくて苦しいの連続。サスペンスドラマということだったが、この映画はヒューマンドラマ。涙なくして観ることはできない、そんな映画だった。