アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどりのレビュー・評価・感想

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アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり
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薬剤師が主人公の病院マンガ

今まで医師や看護師を主人公とする作品が多かった中で、これは薬剤師を主人公とするマンガです。主人公、葵みどりは8年目を迎える薬剤師。年齢は30才を過ぎています。医師が処方した薬に疑問があった場合、疑義照会と言って、医師に確認をもらわないと明らかな誤りでも勝手に変更することはできません。「よきにはからえ」的な医師の対応が、薬剤師と医師の力関係をよく表しています。もう一つの視点が、患者さんやその家族との関係です。薬剤師は入院患者に対して、薬剤について説明したりフォローしたり、ときには医師にその内容を伝えて調整を図ったりします。患者さんの病気に対する思い、薬に対する思いをくみ取ることも薬剤師の大切な仕事です。生真面目なみどりは、患者さんへの「思い入れ」がとても強く、患者さんの家まで行ってしまうこともあります。みどりと患者さんの関わりを通じて浮き彫りにされる、患者さんの「生活像」そして、「患者さんへの生活への介入(ときにやりすぎ)」の場面が、様々なエピソードとともに丁寧に描かれています。患者さんの心理がきめ細かく描かれていることも、この作品の魅力です。その背景には、みどりの亡母、そして妹の「病気との闘い」がありました。みどりは小学生のときに、妹を白血病で亡くしました。その時、親身になって幼い「みどりちゃん」を気にかけてくれたのが、病院の薬剤師さんだったようです。この辺で、みどりが薬剤師を目指した理由が明らかになり、また、萬総合病院に入職した「ご縁」も納得できる感じです。
みどりは総合病院の薬剤師ですが、地域のドラッグストアや在宅を行う薬局薬剤師との連携もあります。若くて情熱的で、でもちょっとおっちょこちょいなみどり、きっと恋バナが…と読者は期待しますが、残念ながらみどりの恋バナは最後まで出てきません。今後みどりはどう成長していくのか、私生活ではどんな「出会い」が待っているのか、まだまだ期待されます。続編が出ることを待ち望んでいます。