野良犬

野良犬のレビュー・評価・感想

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野良犬
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野良犬

黒澤明の全盛期を代表する名作。昭和20年代の東京を舞台にした刑事もの。ある日、若手の刑事が血相を変え警察署に駆け込んできた。ピストルを盗まれたといい、幹部たちは右往左往の大騒ぎ。悪い奴にピストルを使われたら警察の信用が地に落ちる。警戒態勢がしかれた。真夏の東京を汗まみれになりながら、刑事たちが探しまくる。銀座・新宿・上野・浅草・渋谷と、野良犬のように這いずり回る。
20年代の東京の風景を背景に、ドキュメンタリー風の映像で見事に描いて行く。練りに練られた脚本で見る者をぐいぐいと映画の中に引きずり込んでゆく。黒澤の映画監督としての才能が迸り光り輝いている。若手刑事を演じた三船敏郎はまさに野良犬のようでリアルに役を演じている。ベテラン刑事役の志村喬は正に名優のごとし。犯人役の木村功は、やむにやまれぬ犯人像を見事に表現した。そのほかの俳優たちは黒澤組と言われる俳優たちで固められている。
1本の映画がその人の人生を変える事があるという。名作にはそのような力がある。1本でも多くの名作を見ればその人の人生や考えが変わることもある。世の中には映画なんて馬鹿らしいという人もいるが、なんて不幸で悲しい人なのだろうか。1本の映画が歴史を変える事がある。この作品もその中の1本。