忍者と極道

忍者と極道

『忍者と極道』とはWEBアプリ『コミックDAYS』に掲載されている漫画作品。作者は近藤真輔。2020年より連載がスタートした。現代に生きる忍者と対立する極道組織の闘いを描いたバトル漫画である。
WEB連載という形と独特なセリフ回しからTwitterなどのSNSで人気を博している。作者の近藤信輔にとって初の青年漫画作品であり、重版もされた作品となった。本作のスピンオフである外伝作品『獅子の華』『最狂悪童伝ガムテ』も『コミックDAYS』にて掲載されている。

忍者と極道のレビュー・評価・感想

忍者と極道
8

それはそれとしてもやりすぎだろ!

敵と味方が「それぞれの正義」を掲げて戦うフィクションは多い。どんな外道や悪党であっても、恐ろしい行いをするに至っただけの理由があるのだ。悲しき過去、怨念、後悔など彼らなりの行動の理由はあるのだ。

漫画『忍者と極道』の敵組織、極道はそのような「理由のある敵」の極北だ。本作における極道は現実の、いわゆる反社会的勢力をモチーフにした集団だ。薬物売買などの不法行為によって富を築き、暴力で人々を脅かす。そこまでは現実とさほど変わらない。

問題は規模だ。本作の極道が行動を起こせば、平気で数千から数百万、数千万の犠牲が出る。極道の作った薬物は世界中を汚染し、莫大な資金源をもたらす。極道はその資金をもとに闇社会に君臨し、更なるテロリズムで世界を脅かす。規模が大きすぎて半ばギャグの様相だが、作中世界においてそれは絶対の脅威なのだ。

作中、極道は、社会の「正しさ」が救えなかった人間の受け皿として描かれる。実際、登場する極道の中には悲惨な過去を持つものも多い。世界は残酷で、どんなに善良な人間であっても、救われないことはある。だから彼らは、社会に絶望をたたきつけるのだ。

敵役は、時に主人公以上に読者をひきつける存在だ。壮絶な決意が生み出すカリスマや、滅びの美学といった危うい魅力には逆らい難い。
凄まじい魅力に満ちた造詣の悪役を読みたい。そのような人には、『忍者と極道』がおすすめだ。

そして一通り読み進めたときに、「それはそれとしてもやりすぎだろ!」と思うだろう。あまりにも犠牲を広げ過ぎる彼ら極道が討たれることは必然といえる。同情や凄まじい魅力を伴う悪役であることと、はた迷惑な存在であることは両立するのだ。その線引きができているからこそ、「悪」を最期までたっぷり楽しめる作品と言えるだろう。