劇画ヒットラー

劇画ヒットラー

『劇画ヒットラー』(げきがヒットラー)とは、水木しげるによる漫画作品。『週刊漫画サンデー』誌上の「革命家シリーズ」のうちの一作で、本作は同企画の第二弾となっている。1971年5月8日号から8月28日号にかけて連載され、コミックスも刊行された。連載時のタイトルは『20世紀の狂気ヒットラー』だったが、単行本化にあたって『劇画ヒットラー』に改題が施されている。
画家志望の青年だったアドルフ・ヒットラーが政治の道へ進んで独裁者と化し、いかにして破滅へ至ったのかを描いた伝記作品。巻末には参考文献リストも添えられており、執筆にあたっては当時高校生だったナチス・ドイツの研究家、後藤修一に協力を依頼したことでも知られる。さらに、作者である水木自身はヒットラーを善とも悪とも定義することなく、彼の人生を客観的、かつユーモラスに描いているため、「伝記漫画の傑作」として位置づけられている。

劇画ヒットラーのレビュー・評価・感想

劇画ヒットラー
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水木先生の最高傑作マンガ。学びもあり、楽しさもありです

これは、太平洋戦争の時代のドイツの指導者 ヒットラーの一生を、伝記風に仕上げた漫画です。彼はもともと勉強も運動もできない、気位だけ高い、ダメ人間でした。しかし彼が20代のころ、第一次世界大戦が勃発します。義勇軍として従軍したヒットラーは「戦争っておもしれー」と思ってしまいます。彼はいつか、軍を指揮して世界と戦うことを夢見、政治に奔走しだすのでした。それから独裁者となるまで彼が歩んだ道のり、栄華を極めてから衰退するまでの道のりが詳しく、鮮やかに描かれています。
ヒットラーというと、ナチズムを連想しがちですが、この作品にはあまり、「ナチズム」という語や「ファシズム」という語が出てきません(これらの思想がどのようなものだったかという解説は、まったく出てきません)。私は以前、ヒットラーを主人公とした歴史小説を書きましたが、ついつい思想の解説を多く書いてしまいます。おそらく素人は、「(特に激しい生き方をした)人物の人生を描くとき、その思想の話をしなければ迫力のある話が書けないのではないか」と考えてしまうのだと思います。しかし、これを採用せずに面白く迫力のある作品を描くことのできた水木先生を、私は尊敬します。

この作品では、人物の顔がおもしろく描かれており、各人物の話す内容がヘンテコです。学校で友達と、登場人物の表情を真似て変顔を作りながら、この漫画に出てきたセリフを吐き、遊んだことを覚えています。今でもこの作品を読み返すと、その記憶がよみがえってきて、楽しい気持ちになります。