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王道主人公と卑劣な悪役の味が活きる作品
この作品は主人公のゴールドの王道ぶりと悪役のブラックの卑劣さが1つの売りとなる作品であり、平成初期生まれなら知っている人は知っていると言える作品です。ゴールドは基本的におバカで単純、直情的ですが、ポケモンへの愛情と勝負に懸ける心意気、戦ったトレーナーとの間で芽生える友情は本物です。ブラックはゲーム『ポケットモンスター 金・銀』本編のライバルがモデルとなっていますが、自分のポケモンに愛情のあるゲーム本編のライバルとは異なり利用価値がないと判断したポケモンは自分の都合で容赦無く切り捨てる非情な性格をしており、欲しいポケモンは人から奪って手に入れるという倫理観を完全に無視した面も目立ちます。ゲーム本編で1番目に挑戦するジムであるキキョウジムに、あろうことか伝説のポケモンであるフリーザーが出て来るシーンには、雑誌『月刊コロコロコミック』で読んだ2000年当時私は衝撃を受け、2020年現在でもあのような展開は「思い切ったな」と作者と編集者の英断を個人的に評価したくなります。下ネタやお色気が出てこない正統派な作風もまた魅力であり、真面目にポケモンの世界を冒険する主人公を応援したい人にも向いています。