月夜のとらつぐみ

月夜のとらつぐみ

『月夜のとらつぐみ』とは、2011年5月14日にエンターブレインから発売された、笠井スイの初となる短篇集である。漫画雑誌『fellows!』やその別冊、同人個人誌に発表された作品を中心に全8篇が収録されている。細密なペン画と感情豊かな物語が特徴で、清新なデビュー作『花の森の魔女さん』から、鳥を擬人化した表題作『月夜のとらつぐみ』や『水面の翡翠』、『仏頂面のバニー』『story teller story』『猫とパンケーキ』といった多彩な作品が収められている。ユーモアと繊細さ、そして誠実な筆致で描かれる作風は、著者の魅力を幅広く網羅しており、ファンからの評価も高い一冊である。

月夜のとらつぐみのレビュー・評価・感想

月夜のとらつぐみ
7

心に残る短編集まんが

笠井スイさんという方が描かれた漫画で全8篇になる短編集です。
絵柄が細密で素敵、なおかつ雰囲気があります。漫画らしさとペン画の絵本のミックスのような感じで可愛らしさと大人っぽさが両立しています。キャラクター造形も個性があるけど特殊すぎずかといってつまらなくない程度に目がいく絶妙なバランスです。キャラクターの一人ひとりの表情にもこだわりが見え、6・7篇目の「Story Teller Story」では嘘をテーマにしていて心情の複雑さを描くのが難しそうなのに上手く描いています。
ストーリーはほんわかしたもの、仄暗いもの、物悲しいもの、心温まるものとあります。ただそのストーリーはどこか静かで心に残る印象深いもので惹きつけるものがあります。特に気になったストーリーは8篇目の「猫とパンケーキ」です。妻をなくした男と兄を亡くしたホームレスの少女の話です。どちらかといえば波の激しくない単調なヒューマンドラマですが心情の切り取り方と描き方などが丁寧で読んでいると心が安らぐ感じでした。
それぞれの短編がそれぞれの個性があるのにどれも印象的でふとした時に読み返してみたくなるそんな心の残り方になる作品です。落ち着きたいときやコーヒーブレイクに読んでみても良いかもしれません。