現代を生きる「私たち」を描く
「性的マイノリティ」や「LGBTQ」という言葉を耳にする機会が増えて久しい。
この作品に登場するキャラクターたちは、いわゆるこれらの言葉で語られる人々だ。
しかし、そこに差別や偏見のようなものは感じられない。
むしろ「いるよね、こんな人」と、登場するキャラクターに親近感すら覚える。
また、同じように性的マイノリティを感じている読者にとって、登場人物たちの生き様は共感できる部分が多いだろう。
彼ら彼女らは自らのどうしようもないセクシャリティに悩み、苦労する。
時には周囲の善意、悪意によるプレッシャーや、自己嫌悪に押しつぶされそうになるが、結局は「来世ではちゃんとします」とそんな自分を受容する。
こうした思考のサイクルは、誰しも経験したことがあるのではないだろうか。
私自身、自らのセクシャリティに悩んでいた時期にこの作品と出会った。
コミカルな4コマ漫画の中に時折、自分の心の内を代弁してくれているようなセリフがいくつも登場した。
その度に共感し、また不安になり、それでも自分くらいは自分を受け入れようと思えた。
確かに、生々しい描写はある。
単行本の表紙のインパクトに戸惑う人もいるだろう。
しかしこの作品で描かれているのは、他でもない「私たち」である。
そういった描写もセクシャリティも、全て現実に存在するものだからこそ、この作品は共感できる。