ブラック・スワン / Black Swan

ブラック・スワン / Black Swan

『ブラックスワン』とは2010年公開のアメリカのサイコスリラー映画。日本では2011年にR15+指定作品として公開された。監督はダーレン・アロノフスキー。主演にナタリー・ポートマン。『白鳥の湖』で主役の座を射止め、清純な白鳥と官能的な黒鳥の2役を演じることになったバレリーナが役へのプレッシャーから徐々に精神が崩壊して行く様を描く。幻覚か現実かあやふやな描写が観客の目を惹きつけた。批評面、興行成績ともに成功を収め、第83回アカデミー賞では主演のナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞した。

ブラック・スワン / Black Swanのレビュー・評価・感想

ブラック・スワン / Black Swan
8

何かにのめり込む怖さ

白鳥の湖のプリマドンナを目指すバレリーナに怪現象が起きる話です。
見るまでは、お化けとかそういう話かなと思いましたが、それよりも、追い詰められた人はどうなるかという話でした。うまく踊れない、恋をしてないからだなんて言われる、とても魅力的な女性が現れる、もう主人公がおかしくなっても当然です。本当に頂点を目指すのは大変だし、精神力が一番大事かもしれないと思いました。
主人公を演じているのは、ナタリー・ポートマンです。ナタリーは、レオンの頃の少女時代のイメージが強いので、本作を観て大人になったなと思いました。とても聡明なイメージのナタリーですが、本作では不器用で暗い女性を演じていました。上手く踊れずおどおどしている時と、何かが取り付いたように黒鳥になりきる時の彼女が全然違っていて凄いと思いました。彼女の気の狂いぶりが怖いです。ナタリーのライバルの女性は、見るからにセクシーな感じで、ナタリーとタイプの違う美人で、ナタリーが彼女に恐怖を感じたり、負けたくないと思いながらも憧れてしまうのも、よく分かりました。そういう人が現れて、どんどん気持ちがゴチャゴチャになってしまったのだと思います。
本作を観ていると、バレエや舞台というものが実は狂気じみていて、しんどいものだということがよく分かります。
本作を見て、劇場に舞台を観に行きたいなと思いました。

ブラック・スワン / Black Swan
8

白鳥の湖の純真と狂気

ナタリー・ポートマン主演の映画です。物語で重要なバレエはナタリー・ポートマン本人が踊っていてバレエの演技と映画の演技の両方で観客を惹きつけます。
主人公ニナ・セイヤーズは所属しているバレエ団の新シーズンのオープニングを飾る「白鳥の湖」のオーディションのプリマ候補の一人。元ダンサーの母とバレエに心血を注いできたが、芸術監督のルロワからは白鳥は良いが黒鳥は上手く表現されていないと指摘され意気消沈する。しかも新人ダンサーのリリーのバレエに動揺する。彼女はルロワに直談判し手厳しい言葉を浴びせられたが、なんとかプリマの座を掴むことになる。しかし周りからの嫉妬や、ルロワから黒鳥の手本にリリーを指示され、複雑な思いを抱きライバル視したり、上手く黒鳥を表現できずに焦ったりと精神的に追い詰められ孤独と苦悩に苛まれていくうちに彼女は現実と妄想が入り乱れていきます。
とにかく彼女の精神にストーリーもカメラの演出もスポットを当てており心に狂気が宿っていくその流れが生々しくも共感してしまいます。またバレエの世界がリアルな描かれ方なのでいかにプリマへの道が厳しく困難なのか、「白鳥の湖」という定番のバレエの難しさなどがわかります。恋愛に対する価値観や距離感、母子の関係、ライバルなど人間関係の複雑さも丁寧に描かれています。しかしラストの公演本番はニナの精神の狂気的な流れと表現の集大成に圧倒され観終わった後はしばらく黙り込んでしました。精神的に色々耐えられそうな時に観たほうが良いです。それほど映画の出来が素晴らしいです。