未知のジャンル、台湾の人形劇×日本のアニメ文化
台湾の伝統的な人形劇である布袋劇と日本のアニメ文化が化学反応を起こした斬新で大胆な作品。日本のアニメやその他の脚本で有名な虚淵玄さんが発起人となっている本作は、日本アニメの文脈を色濃く反映したストーリーとキャラクターをベースに作られた圧巻の人形劇。繊細で美しい人形と荒々しくダイナミックなアクションに目を奪われ、先の読めない物語にワクワクハラハラする。物語は熱く王道的な展開でもあるのですが、魔法少女まどか☆マギカなどで世間を沸かせた虚淵さんの手掛ける脚本だけあって一筋縄ではいきません。初めは映像の独特な空気感に馴染めず敬遠してしまうかもしれませんが、徐々にその芸術性に魅せられること請け合いです。細部まで繊細に作りこまれた人形や背景、小物類。それらを汚すことを厭わず巻き上がる砂ぼこりや降り注ぐ雨たち。そして何より日本のアニメファンとしては声優さんたちのお芝居は見どころのひとつでしょう。人形劇自体は台湾の言葉をベースに作られているらしいのですが、そこにピッタリと違和感なく溶け込んでいる声がより日本人にとって親しみやすいものにしてくれます。そして澤野弘之さんの手掛ける劇中曲もまた作品世界を彩る魅力的なエッセンス。これほど見ごたえがある芸術作品が、ここまでライトな形で楽しめるのは凄いことだと思います。布袋劇自体の癖はかなり強い為に評価は見る人との相性に大きく左右されるでしょうが、この作品の人形に抵抗のない方は一見の価値アリです。