アクタージュ act-age

アクタージュ act-age

『アクタージュ act-age』とは、原作・マツキタツヤ、漫画・宇佐崎しろによる日本の漫画。『週刊少年ジャンプ』2018年8号から2020年36・37合併号まで連載された。役者志望の女子高生、夜凪景(よなぎけい)が映画監督の黒山墨字(くろやま すみじ)と出会い、彼が率いる「スタジオ大黒天」に所属して、役者をめざし成長していく姿を描く。原作者が強制わいせつ容疑で逮捕され、その影響で漫画は打ち切りとなってしまった。ストーリーも絵柄も読者から高い評価を得ていた作品だっただけに、原作者の逮捕そして打ち切りの発表は、読者に衝撃を与えた。

6u0223-2011のレビュー・評価・感想

アクタージュ act-age
9

演劇百合バトル少年漫画!

アクタージュは少年漫画である。週刊少年ジャンプで連載しているから、なんて当たり前のことを言いたいわけではない。主人公、夜凪と、ライバル、千世子の関係が、実に少年漫画的なのである。
アクタージュは一見、バトル漫画ではない。この世界には悪役は居ないし、怪物もいない。主人公たちは女優であり、映画やCM、演劇に挑戦していく。また、アクタージュの主人公夜凪は女であり、ライバル千世子も女である。ジャンプで巻頭を飾る時も、二人の顔が良い女が並ぶという、少女漫画、あるいは青年漫画のような雰囲気がある。更に更に、夜凪と千世子の友情は少々危うく、「これって百合じゃね?」と思う少年じゃない読者も多いとか。
しかしながら、アクタージュは確かに少年漫画であり、バトル漫画である。以下、ネタバレしながらこれを解説する。
何故、アクタージュはバトル漫画なのか。彼女たちはあくまで俳優であり、戦闘するとしても、演劇の設定としてのはずだ。しかし、一度でも読んだものは、確かにこれはバトル漫画だと納得するだろう。
例えば、アクタージュはここから人気が出たと言われるデスアイランド編(別称クソ映画編)。主演の千世子は一切周囲に心を開かず、完成された演技を展開する。一方、夜凪はメソッド演技によって役に入り込み、真に迫った演技を展開する。(何しろ入り込み過ぎて、その場で嘔吐するほどだ)。二人の価値観が異なる天才は、お互いを意識しあい、夜凪は千世子と仲良くなるため、心を開かせ、素の千世子を見ようとする。一方、千代子は夜凪を意に介さず、淡々と自分の求められた役割をこなしていく。このせめぎ合いは、会話劇やオフではなく、撮影の中で行われていく。嵐の山の中を二人で逃げるシーンを撮影しながら、お互いの思惑を果たさんと、二人は自分の芝居をぶつけ合う。スタンドバトルや遊戯王の決闘(デュエル)のような熱い戦いである。激闘を経て仲良くなった二人だが、どちらも天才女優であり、これから伸びていく夜凪と、全盛期がもうすぐ終わると周囲に噂される千世子と明暗が分かれてくる。一緒に変装して買い物に行くほど仲良くなった二人だが、ある夜、千代子は夜凪を呼び出し、「どちらの芝居が上か興味ない?」と尋ねる。もしアクタージュが百合漫画であるのなら、夜凪は千世子の問いに惑っただろう。あるいは、青年漫画であるなら、「こんなはずじゃなかったのに……」と葛藤したか。しかし、夜凪は女優として千世子の問いに答える。「うん。私も知りたい」。かくして、夜凪と千世子は、現在ジャンプで連載中のダブルキャスト編で、どちらが上か決着をつけるべく、激突するのである。
以上、演劇百合バトル少年漫画のアクタージュのレビューである。まだ既刊は9巻だからぜひご一読を。