サバのいない生活
人と動物との関係性だけでなく、人と人との関係性をも考えるきっかけとなりました。
長い間連れ添ったサバを失い、喪失感で無気力になってしまった作者の心の寂しさを埋めてくれたグーグー。しかし単なる心の寂しさを埋めるための道具としては向き合っていません。人とペットという関係性ではなく、同等な関係で同居人として共存しています。例えば「エサ」とは言わず「ごはん」という表現をしています。作者の動物への愛情のかけかたが心の余白を埋めるだけでなく、グーグーだけに限らず他に同居しているそれぞれの猫たちの気持ちをも感じ取り調和した関係性を保っているように感じました。猫の気持ちがわからないけれど、それを作者が読み取れることができるのは、猫たちを観察して適度な距離を保っているからです。コミュニケーションは言葉だけでなく、相手の様子を汲み取り予測しながら工夫を重ねていくことが大切なんだなと思いました。作者と猫たちのように、言葉がなくても伝わるということが動物だけでなく人と人との関係性にもつながると思いました。作者とグーグーは人と猫だけど言葉がなくとも通じ合って人と人とが話しているような日常生活を送っていると思えました。こころ温まる、しかしそこにたくさんの気づきがある作品だと思います。