ヘルタースケルター

『ヘルタースケルター』とは、1995年7月から1996年4月まで『FEEL YOUNG』(祥伝社)で連載された、岡崎京子によるサイコロジカルホラー漫画である。コミックスは全1巻刊行された。
物語は全身を美容整形手術で作り変えたファッションモデルのりりこ/比留駒はるこ(ひるこまはるこ)が、手術の副作用と仕事のストレスで心身ともに崩壊していく様を描いている。
本作品は2004年に、「第8回手塚治虫文化賞」のマンガ大賞を受賞した。
作者の岡崎は本作品の連載終了後交通事故に遭って意識不明の重体となり、回復後も後遺症が残ったため漫画家生命が絶たれてしまった。
この漫画は実写映画化され、2012年7月14日に監督・蜷川実花で公開された。この映画は主役のリリコ役を沢尻エリカが演じて話題を呼んだ。また監督の蜷川実花は「新藤兼人賞2012」で銀賞を獲得し、「第36回日本アカデミー賞」では沢尻エリカが優秀主演女優賞、寺島しのぶが優秀助演女優賞に選ばれた。

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ヘルタースケルター
9

人間の欲望、心理、社会の風潮を描き切った過激なコミック

全身整形美女の悲惨さ、残酷さがこれでもかというほど過激に描かれています。主人公のリリコは売れっ子モデルとして活躍し、その美しさは存分に伝わってくるのですが、華やかな表舞台の裏側は過酷なもの。業界のドロドロがストーリーとなっていますが、ファッショナブルでクールな作風が、汚らしいだけのものに見せません。

人間の欲望をドラマチックに描き、読みごたえは満点。リリコは欲望の固まりのような人物ですが魅力的で、同情とも共感とも違う、何とも言えない引力で引き込まれます。そして興味深いのは、リリコの後輩モデル、吉川こずえとの対比。余談ですが、この吉川こずえは作者・岡崎京子の別の漫画『リバーズ・エッジ』にも登場しています。彼女は生まれたときからかわいい、天性の美少女。人工の作られた美女のリリコが、不自然なまでに何かを追い求めるのに対して、吉川こずえは飄々としていて、熱くなったりはしません。この、本当の理想的な美少女が登場することで、みんなの理想を演じるために嘘で固めるリリコの歪さ、悲しさが際立ってきます。

ブームが来てはまた去っていく。人気を獲得し続けることは容易ではありません。無理に無理を重ねたリリコの体と精神が追いつめられていく様子の描写は素晴らしく、深層心理までも描き出すように展開していきます。一人のモデルの伝説的な生き様とともに、社会の風潮をストーリーに込めた傑作です。