人を選ぶ映画ではあるけど、私は好き。
この映画はクトゥルフの怪物(公式に発表されているわけではないが、姿形が似通ったものが多い)が出てくる数少ない作品である。よってクトゥルフのTRPGに手を出し、その怪物についての参考資料が欲しいなどといった方にもおすすめできるだろう。作品全体を通してもクトゥルフらしさを前面に押し出した「どうにも抗えない怪物」や「主人公の行動が裏目に出る」などのオンパレード。ラストも胸糞な主人公に対して最大のバッドエンドとなるので、見る側はそれなりに覚悟がいることになる。しかしそれでも怪物の作りの一つ一つの細かさや、恐怖に駆られた時の人間の心理状況の移り変わり。恋人を何をしてでも助けようとするもの、神に縋るもの、生贄を捧げよと声を上げるもの。果たしてこのような状況に陥った時に、真に凶悪なのは怪物なのか、人なのかと考えさせられる作品である。そしてそんな中でも主人公の「この状況をなんとしてでも変えなくてはいけない」という考えは、この映画ではことごとく裏目に出てしますが誰もが持つ考えである。濃密に霧のように絡む恐怖とどうしようもない状況に焦る心理、視聴し終わった後は思わず扉や窓、カーテンの隙間から覗く深淵が気になって仕方がなくなることだろう。