ターゲット不明の迷作
『若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!』は、ハイスペックだけどコミュ力だけがゴミの主人公・フランツが、ホワイト企業に就職し、そこから弱者を労わりながら適度にストレス解消していく作品であり、悪く言えばターゲット不明、良く言えばバランスの取れた作品である。
このような作品は、いかに様々な読者に対応できるかが問題である。つまり、どれだけ色々な「弱者」を描けるかが問題だ。「無能だから自殺しようとしている人」、「男性が怖い人」、「人間が怖い人」、「親にいじめられた人」など、様々な弱者を出していき、それをフランツが慰め、癒し、そして出来ることをさせて、そこから協力してみんなで「会社として」強くなっているという言わば群集劇的なストーリーに持って行く必要がある。それが出来るかどうかがとても重要だ。それができれば、この作品は名作になるだろう。
しかし、ターゲット不明感は否めない。なぜなら、「辛い時」に読もうとすればフランツの「ハイスペックさ」と「女運の良さ」に嫉妬するだろうし、「ストレス解消したい時」に読もうとすれば彼らの「優しさ」が物足りなく感じるであろうからである。かと言って一般向けに実写化するには世界観がファンタジック過ぎるし、漫画なのだから、そこまで「全方位向け」にする必要は逆になかったのではないかという気さえする。