変幻自在の男、本当の才能とは
ミュージシャン、俳優、文筆家、そして誰もが羨む人気女優を射止めた男、星野源。
音楽家としては常にメインストリームを歩き続け、大ヒットを飛ばしていますが、作曲家の面からその才能を探ってみたいと思います。
両親がジャズ好きで幼少時から自然に音楽が近くにある環境で育った星野は、中学生の頃から作曲を始めていました。そして高校の仲間を集めて作ったバンドが「SAKEROCK」です。日本では珍しいインストゥルメンタルバンド(歌の無いバンド)なのです。ここで主に作曲を担当していた星野が作り出したのは、若者らしからぬオールドジャズや「クレイジーキャッツ」の影響を受けた、どこかペーソスのある音楽でした。
ちなみにこのバンドのリード楽器であるトロンボーンを担当していたのは、現在「在日ファンク」というバンドのボーカル兼俳優の浜野謙太です。星野本人もよく語っているように、当時大きな影響を受けていたのが、「はっぴいえんど」や「YMO」で活躍していた細野晴臣です。なかでも細野が作った無国籍音楽の影響が大きく、大ヒット曲『恋』を発表した頃の星野は、自らの音楽を「イエローミュージック」と名付けて、ブラックミュージックとは違うアジアならではの音楽を完成させようとしていました。
さらに往年のR&Bから近年のブラックミュージックまで、さまざまな洋楽や邦楽までを貪欲に吸収して、懐かしさと新しさの混じった「次の星野源」を目指しています。俳優業をこなしながらここまで本格的な活動をする音楽家は稀な存在と言えましょう。次の星野源は何を聞かせてくれるのか、本当に本当に楽しみです。