邦題とのギャップが凄いがなかなかの良作
故郷インドを離れてフランスの片田舎に突然やってきた、ハッサン一家とインドレストラン。彼らマイノリティたちの孤独、闘い、そして順応。かたや迎えたフランスの片田舎の人たち。その戸惑い、偏見、そしてお互いの和解をシリアスになりすぎない絶妙な柔らかいタッチで描いた作品です。マイノリティ、インド代表はオム・プリ扮するハッサンの父親、パパ。フランス代表はハッサンたちの店の向かいに建つ、老舗レストランの主人、ヘレン・ミレン扮するマダム・マロリー。お互いに材料買い占め、インド音楽攻撃(笑)、チクリ攻撃と両者は徹底的に敵対しますが、あるシリアスな事件をきっかけに少しづつ距離を近づけていきます。そして類まれな料理の才能を見抜いたマダムの采配でハッサンは有名シェフとなり家族のレストランを離れパリに。そして最先端の店で働く中大事な何かを見失いかけた時に気づく、愛しい人や家族への想い。原題の「The Hundred-Foot Journey」はまさにこの作品の想いを表しています。なぜこの邦題がついたのか悩みます。配給元がディズニーだからでしょうか。ちょっとミスリードです。主人公ハッサンを演じるマニシュ・ダヤルや、彼の恋人シャルロット・ルボンの演技もフレッシュで良いですが、なんといってもオム・プリとヘレン・ミレンの二人。この二人が土台をしっかり支えこの映画をまさに魔法のスパイスで料理し、良作にしています。パパとマダム・マロリーの駆け引きが本当にほほえましく、あんな大人になりたい、あんなカップルになりたいと思わずにいられません。残念ながらパパ役のオム・プリは去年お亡くなりになりました。彼の繊細な演技が好きだった私としては悲しい限りです。主人公ハッサンを演じたマニシュ・ダヤルはただいま医療ドラマ「The Resident(原題)」で活躍中です。