命とは
次々と新しい漫画が生み出されているが、新しい漫画だけでなく、漫画の古典というべきものに触れるのも悪くないだろう。
『火の鳥』は漫画の神様と称される手塚治虫の代表作の一つである。古代から未来まで、火の鳥を通して人間模様を描いている。人の持つ醜悪な心から最上の愛まで、その醜さと美しさを余すところなく描き出す。手塚治虫は各話を通してひとつの疑問を投げかけてくる。
人々の寿命が延び、永遠の命というものも絵空事ではなくなってきている。しかし、それは本当に喜ばしいことなのだろうか。長年寝たきりで延命装置なしでは生きられない人は、果たして生きていると言っていいのだろうか?生きることに疲れてしまっている人を無理矢理生かすことには、果たしてどのような価値があるのか?長く生きることが幸せだということに疑問を抱く人は、現代社会において少なくないだろう。手塚治虫は現代の人々の命題に半世紀以上も前から焦点を当て、警鐘を鳴らし続けている。
現代の問題を紐解くのに、現代の漫画を読むことは時代に合っていると思う。しかし、古典と言われるような漫画にも、現代人の心をつかむような英知が眠っているはずである。『火の鳥』はそのような古典漫画の代表作と言えるのではないだろうか。