8
真実とは?
血が繋がっていても、相手の心は分からない。親交を深めた友人でも、相手の考えはわからないー-。
人との関わりにおいて、誰もがぶつかる壁であると思います。「他者の心や考えが分からなければ、自身にとっての真実と他者にとっての真実が同一であることは確認できない」ということでもあります。
この映画は「真実の客観性」について深く考えさせられるものです。
どんなに猟奇的な殺人鬼であっても、法廷では身の潔白を証明しようと足掻きます。どんなに悲惨な事件の被害者であっても、加害者を責め立てる姿には悪意を感じることがあります。人は、本当に心の底から信じるもののためであれば、真実を都合よく解釈するのです。
『メメント』の主人公は、10分しか記憶を保てない男「レナード」です。ショッキングな事件の被害者であり、その犯人を探し出そうともがく様が描かれています。写真、メモ、タトゥーなど様々な方法で記録を残そうとしますが、記録を残すのは「自分」。しかし、文字や画像でしか情報は伝達されない。つまり、「記録を残す瞬間の自分」と「記録を確認する自分」は、心も考えも分からない「他人」であるのです。この映画では、そんな「他者との壁」を描き出しているように見えます。
ぜひとも一度、視聴してみてはいかがでしょうか。