グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel

グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel

『グランド・ブダペスト・ホテル』は、ウェス・アンダーソン監督、レイフ・ファインズ主演で製作された。ズブロフカ共和国にあるグランド・ブダペスト・ホテルが物語の舞台である。コンシェルジのグスタヴと部下のムスタファを主人公に、常連客をめぐる殺人事件と遺産争いに巻き込まれた二人が、ホテルの威信のためにヨーロッパ中を駆け巡り事件解明に奔走する。本作は1930年代、1960年代、1985年、現在と4つの時間軸で展開されていく。

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グランド・ブダペスト・ホテル / The Grand Budapest Hotel
10

グランド・ブダペスト・ホテル

この映画のタイトルやイメージ画像を見て何を思うかといえば、まず見た目のきれいさだ。この映画は100分間ずっときれいだ。まるで甘ったるいお菓子で出来ているようだ。だが、その中身はどこかブラックで不穏な空気が漂い、キャラクターのセリフや動作、描写にフッと笑ってしまうシニカルな滑稽さがある。
たとえば、ホテルを取り仕切るこの映画の主役であるムッシュ・グスタヴは、老婦人殺害の罪をふっかけられ監獄に放り込まれるのだが、同房の坊主で上半身裸の囚人(演じているのはハーヴェイ・カイテル)がおもしろい。彼は脱獄計画のため刑務所の見事な見取り図を描く。しかし、彼の体に彫られているタトゥーはどれも陳腐でまるで子供の落書きみたいだ。そういった描写になんだかフッと笑ってしまう。
また、ムッシュ・グスタヴ役のレイフ・ファインズは、これまでのシリアスな役柄と異なりダンディなんだけどどこか抜けたようなキャラクターを見事に演じていて、まさにはまり役だと思う(彼が崖から落ちかけるシーンがクソおもしろいのだけど、それはぜひ自分で見て確認してほしい)。
この映画の魅力の一つは息をつかせる間もないスピーディーなめくるめく展開なのだが、エンディングはそれまでの話が嘘のように(実際嘘だけど)突然訪れスパッと終わる。でも「人生そんなもんか」と納得できてしまう。好きな映画です。