猫を飼っていないなら楽しめる
最愛の妻を無くし人生に落胆していた元ピアニストが、ブサイクを理由に処分寸前で人生に落胆していた猫とペットショップで運命の出会いをし、お互いに寂しかった人生が変わっていく。という理想的なストーリーで始まる漫画。主人公の「おじさま」こと神田冬樹も「ブサイク猫」のふくまるも心優しい性格で、ストーリーも非の付け所がないような美しい話だ。読んでいるだけで幸せな気分になる良い内容である。
だが、おじさまの描写も猫の描写もあまりにも夢物語すぎて、実際に猫を飼ったことのある人には、ここぞという楽しみ方や共感ができない。猫がいるだけで癒やされるという生活の満ち足り方や、要所要所で描かれる猫の可愛い仕草には共感できるが、ふくまるのモノローグに流れるあまりにも人間チックな語り草にはまるで猫らしさが感じられない。また主人公のおじさまやその周辺人物、亡くなった元妻などが聖人すぎて、日常の一コマという場面にもリアリティが一切感じられない。その上でお涙頂戴ストーリーを展開してくるので、読んでいる最中に白けてきてしまうというのが正直な感想だ。
しかし2020年から始まったテレビ東京が実写化したドラマは秀逸である。そのリアリティのなさを、草刈正雄というまたリアリティのないダンディな俳優と、ぬいぐるみを使ったふくまるの再現というリアリティのなさで、上手にパロディ化していて、余計な事を考えずにすんなりと感情移入ができるようになった。見るならドラマがおすすめである。