女性目線でできたスーパーヒーロー像が新しい
マーベルスタジオの成功以来、ハリウッド映画はヒーローたちに「征服」されてしまった感がありますが、日本人にとって「男の子向き」のものである同ジャンルも、海外の方が作ると多様性のフィールドになりえることが窺えます。本作もそんな作品の一つです。通常悪者を倒すシーンは、剣やビーム砲、必殺技のオンパレードで、最後は大爆発…なんてオチが日本の戦隊モノなんかだと定番(古い?)でしょうが、本作では主人公であるダイアナプリンスは一度も剣を振るいません(ちなみに前作では剣を振るって悪者をボコボコにしてましたので、今作はあえて武器を使うシーンを排除した気がします)。代わって戦いの場面で使うのは、相手を物理的に傷つけず、捕縛する機能しかもたない(原作や前作だとその他機能をもっていることが分かるんですが)光る縄だけ。ラスボスとの最終決戦でも相手の心に訴え、人々の善意を呼び起こし、悪に陥るしか選択のなかったヴィランを救済して世界は救われる…そんな内容でした。作品全体を通して、恋人を想う心や、弱者への優しさ、大切なものを喪失した人を慈しむ気持ち、世相を憂う心情などが溢れていて、見終わった後は気持ちがとても暖かくなりました。監督であるパティ・ジェンキンスさんは「女性」監督のジャンルにカテゴライズされ、男性と同じステージで評価されない配給会社の姿勢に一時抗議を示していたそうなのですが、母性を源泉とする優しさはやはり女性ならではで、男性が持ちにくいものですから、そういった個性は平等の概念とは別の次元で残って欲しいなと思いました。