Strange Circus 奇妙なサーカス

Strange Circus 奇妙なサーカス

『Strange Circus 奇妙なサーカス』(ストレンジ サーカス きみょうなさーかす)とは、2005年に製作された日本映画である。近親相姦や児童虐待、身体改造といった極めて過激な題材を扱い、インモラルかつ幻惑的な世界観を描き出した禁断の官能ミステリー作品。公開時のキャッチコピーは「父に抱かれているとき、私の中に母が宿る」。主演を務めた宮崎ますみが本作で12年ぶりに女優復帰を果たしたことでも大きな話題を呼んだ。なお、過激な性愛・暴力描写が含まれるためR18+指定となっている。
物語は、実の父親から肉体関係を強要され心が病んでいく小学生の娘・美津子と、激しい嫉妬から娘に虐待を加えながらもやがて心の一体化を起こしていく母親の歪んだ関係から始まる。ある日、美津子は暴力から逃れるために母親を階段から突き落として殺害するが、実はここまでの凄惨なドラマは車椅子の小説家・妙子が執筆した劇中作のストーリーであった。妙子の担当となった編集者の田宮は、編集長の命令で彼女の身辺調査を始めるうちに、その小説が彼女自身の自伝なのではないかという疑惑を抱き、狂気と虚実が入り乱れる迷宮へと迷い込んでいく。
本作は海外の映画祭でもその独自のアート性と強烈な映像表現が絶賛され、第56回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門においてベルリン新聞・読者審査賞を受賞。さらにカナダのファンタジア国際映画祭'06では作品賞と主演女優賞の2冠に輝くなど、国内外のファンタスティック映画祭を中心に高い評価を獲得した。

higuchiyasato0のレビュー・評価・感想

Strange Circus 奇妙なサーカス
9

まるでブランコ

主人公・美津子は、実父から性的虐待を、その場面を目撃した実母からは「愛する夫を奪われた」といわれのない暴力を受け、徐々に精神を病んでいく。
最初から最後まで救いのない映画だが、ところどころ笑えるのは悲劇が行き過ぎると喜劇に変わるからかもしれない。
美津子の精神世界に存在するサーカスは奇妙でグロテスクで、それでいて妖艶だ。
辛い現実から逃れようとしながら、精神世界であっても逃げることが出来ぬほど過酷な環境に置かれている美津子に、同情を禁じ得ない。
彼女を取り囲むのは性の奴隷と化した大人達。
「わたしはもともと、死刑台の上で生まれたようなものだった」と美津子本人が言っているように、思わず目をそらしたくなるような出来事が彼女に降りかかる。
終わりのない地獄で生きる続ける彼女の幸せを願わずにはいられない。
しかし、最初に書いた通り、この映画に救いはない。
物語が進むにつれ、現実と精神の境界線があいまいになり、美津子は本格的に崩壊していく。
それに反し、物語は真相に近づくが、物語は美津子の視点で描かれているため、本当の意味の真相にたどり着くことは叶わない。
まるでサーカスのブランコのように現実と幻想、真相と虚偽を行き来し、視聴後も頼りない気持ちにさせられるが、それが心地よい映画だ。