Strange Circus 奇妙なサーカス

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Strange Circus 奇妙なサーカス
9

まるでブランコ

主人公・美津子は、実父から性的虐待を、その場面を目撃した実母からは「愛する夫を奪われた」といわれのない暴力を受け、徐々に精神を病んでいく。
最初から最後まで救いのない映画だが、ところどころ笑えるのは悲劇が行き過ぎると喜劇に変わるからかもしれない。
美津子の精神世界に存在するサーカスは奇妙でグロテスクで、それでいて妖艶だ。
辛い現実から逃れようとしながら、精神世界であっても逃げることが出来ぬほど過酷な環境に置かれている美津子に、同情を禁じ得ない。
彼女を取り囲むのは性の奴隷と化した大人達。
「わたしはもともと、死刑台の上で生まれたようなものだった」と美津子本人が言っているように、思わず目をそらしたくなるような出来事が彼女に降りかかる。
終わりのない地獄で生きる続ける彼女の幸せを願わずにはいられない。
しかし、最初に書いた通り、この映画に救いはない。
物語が進むにつれ、現実と精神の境界線があいまいになり、美津子は本格的に崩壊していく。
それに反し、物語は真相に近づくが、物語は美津子の視点で描かれているため、本当の意味の真相にたどり着くことは叶わない。
まるでサーカスのブランコのように現実と幻想、真相と虚偽を行き来し、視聴後も頼りない気持ちにさせられるが、それが心地よい映画だ。