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美しかった
『ヴィクトリア』は、監督の幼少期の体験を映画化するために自らメガホンを取った作品とのことで、ベースは監督自身の実体験となっているものだそう。幼いヴィオレッタと、写真家アーティストの母親とのすれ違いや葛藤、複雑な家庭環境での家族間でのいざこざなどが描かれた作品です。まだ幼いヴィオレッタにとって、貧しくて父親も兄弟もいない家庭で、ろくに帰って来ない母親と祖母しか頼れる相手がいないというのは、相当心細い状態であると思いました。そんな中で、ふとしたことをきっかけに写真家である母親のモデルとして撮影を受け始めます。おそらく幼いヴィオレッタにとってはお遊びのようなもので、母に構ってもらいたかったのだと予測がつきます。ですが、その母の要求は次第にエスカレートしていき、ヌードを撮るようになっていきます。自分の芸術的な才能が認められたこととお金が入ったことで、度を越したのです。アーティストである前に、ヴィオレッタの前では母親であるということを忘れてしまったかのような身勝手な態度にヴィオレッタは深く傷付き、互いの溝は深まっていきます。学校でもからかわれて、孤独にさいなまれるヴィオレッタの様子はおかしくなっていくのですが、そんな姿に胸が痛くなりました。お話はナイーブですが、映像美が素晴らしいです。