星野源
星野源は多彩だ。「俳優」、「歌手」、「執筆家」…。彼が動くと鮮やかな空気が流れ、観る人々を魅了する。じっとしていられないのだろう。常に一つの場所にいない。時に演じ、時に歌い、時に書く。くるくると踊るように前へ、前へと進む。とても楽しそうに。彼が笑いながら進む道はどこに向かっているのか分からない、予測が出来ない。けれど進む道程には人の笑顔がある。きっとこの先も楽しいことが待っていると思わせる力が彼にはあるのだ。
私はその力を、特に彼の「音楽」に感じる。彼の4thシングル「知らない」。大切な人を亡くした気持ちを歌っている曲なのだが、その中に出てくる詩に「絶望」というワードがある。悲しい曲をさらに悲しくさせるワードだが、彼は歌の中で「絶望」というワードを最終的に「前に進む覚悟」としての意味も含ませた言語に変えた。また、8thシングル「SUN」。彼の知名度を確固とした楽曲だ。明るい曲調の中に「僕たちはいつか終わるから 踊る いま」という詩が入る。「死」という概念を曲に入れることでただ楽しいだけではない、これもまた「前に進む覚悟」を含めたのではないかと考える。
星野源は活動中、体を壊し生死の境を彷徨った。その経験からか、彼の表現には精一杯生きる、「死」があるのだからこそ今を楽しみたい、やりたいことをやりたい!という気持ちを感じる。彼から発せられる「生きる」という強い思いが、観る側である私たちの気持ちを強く揺さぶっているのではないだろうか。