悲しいファンタジー
知的障害を持つ父と娘の話。父は殺人の容疑で収監される。そこが7番房である。娘に会いたいという父の思いに応えて、7番房の仲間達は娘を潜入させる。娘と会えた父に再び幸せな時間が訪れるが、裁判で父は娘のために罪をかぶる。7番房の仲間は収監されるくらいなので悪者たちであるが、二人の親子愛を間近で見ていくうちに彼らの心も解けていくのがわかる。お話全体が現実の尺で測ってしまうと「ありえないだろ」となってしまい、特に気球のシーンはその一押しポイントだが、そこがいい。この悲しいシュチュエーションがそもそも夢物語であって欲しいのだから。韓国警察の汚職や、知的障害者への理解不足。現実の問題はこんなに美しくないんだから。
最後は涙を流そうと思ってるわけではなくとも、親子の別れ、もう2度と会うことはない別れ、人が亡くなった事を体験したことがある方ならば、あの悲しさを思い起こし、涙が流れてくる。
そこから、時はながれ、娘は知的障害、犯罪者の娘として生きていた。娘は父を取り戻すことはできないが、父を変えることはできると、弁護士になり、知的障害、犯罪者、そんな肩書ではなく、大好きな父にするために、かつての父の事件の弁護をする。娘とたった6年しかいれなかった父親だが、その後娘は真っ直ぐ育った。6年という短い時間だったが、父は拙い言葉や知識でたくさんの愛情を注いだのがわかった。生まれて初めて受ける愛情は親からの愛情だ。愛情は注ぐ側が沢山与えれば与えるほど、愛情を受ける側の受け皿は大きくなる。成人してからでは、愛の選り好みもするため自分の愛の受け皿をいっぱいにすることは難しい。父は娘の愛の受け皿を最大限に大きく、父と別れてからの枯れることがないようにたっぷり愛を注いでいたのだろう。