親の愛情
多くのテーマが盛り込まれており、難解な部分もありますが、あらゆる要素が絡む、深く濃い作品で、読み手の経験や年代によって感じ方が変わる作品だと思います。
私が感じたテーマは、環境問題、戦争、血族間の争いと親の愛、生と死、人の存在とエゴなどでした。
その中でも、血族間の争いと親の愛を、この作品から私は強く感じました。
王位争いの渦巻くトルメキア。クシャナ殿下を暗殺するため毒が盛られるのですが、クシャナの母は(多分それが毒だと分かっていながら?)それを口にします。
その結果精神を患ってしまい、人形をクシャナだと思い込んで甲斐甲斐しく世話をします。
成長したクシャナが戦場に出る際、狂ってしまった母親に別れの挨拶をしに行くシーンは、読んでいてとても辛かったです。
命をかけてまで守った我が子が最期の別れを言いに来たのにそれが分からず、人形を必死に守りながら、本物のクシャナに暴言を吐いてしまう母親。そんな状態になってでも守ってもらった尊い命を、戦場で捨てる覚悟ができているクシャナ。
母も娘も、生まれた場所が違ったらどんなに良かっただろう。でもその運命を受け入れないといけないんだなぁ、と涙が止まりませんでした。
環境問題などにフォーカスされがちな作品ですが、本当にあらゆるテーマがあり、読む人の経験や考え方によって、得るものが変わる作品だと思います。
数年後に読んだら私の感想も変わると思うので、必ずまた読みます。