パルプ・フィクション / Pulp Fiction

パルプ・フィクション / Pulp Fiction

『パルプ・フィクション』とは、クエンティン・タランティーノ監督による1994年公開のクライム映画である。主演はジョン・トラボルタ、共演はサミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン等。アカデミー賞脚本賞とカンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した。ギャングであるヴィンセントと相棒ジュールズは、ボスからの命令でスーツケースを取り返すべく、アパートに潜入する。3つの異なる犯罪エピソードから構成されており、ストーリーの時系列と映画の時系列が異なる構成が話題を呼んだ。バイオレンスと乾いた笑いに満ちた傑作群像劇。

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パルプ・フィクション / Pulp Fiction
10

パルプ・フィクションは最高の低級映画だ!

カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。物語は、とある大衆レストランで話す二人のチンピラカップルの会話から始まる。パンプキンとハニーバニー。二人は強盗で、最近は割りの良い仕事がないとぼやいている。ふと、二人はこのレストランを強盗すればいいのではないかと思いつく。そして二人は拳銃を持って突然立ち上がり、「皆騒ぐな!強盗だ!」「ちょっとでも動いてごらん!一人残らず脳ミソ吹っ飛ばすわよ!」と叫んでストップモーション、そしてオープニングテーマ曲「Misirlou」がかかる。最高のオープニング。この映画にはほとんどこのようなしょうもないチンピラ達しか出てこない。皆、しょうもないような話をし、人をなんでもないかのようにどんどん殺し、人がどんどん死んでいく。その一方で、どぶ板通りのどうしようもないチンピラ達の、一瞬の輝きが確かに刻み込まれている。
この映画の特徴の一つは、人間達の上下関係が目まぐるしく入れ替わる事だろう。ある場面で主人公だった人間が、次の章ではあっさりと死ぬ。ある場面で最恐に見えるマフィアのボスが、次の章では警官にレイプされている。また、人間達が本当にどんどん、あっさりと死ぬ。しかもそこには物語上の因果関係が一見ほとんど見られない。「悪い奴だから死ぬ」とか「悪い奴だから撃たれる」という事ではない。そんな映画上の都合は、一見この映画にはほとんど見られない。でも、現実の世界はそんなどうしようもない世界なのかもしれない。いい奴だから生き残る、悪い奴だから死ぬ、そんな事は現実の世界ではほとんど起こらないのではないか。そんな世界のどうしようもなさと、その中でも一瞬だけ輝く人間の煌めきを、この映画は確かに映し取っている。全体の物語はまさにタイトル通り扇情的で安っぽいように見える話。だがそれが最高に面白い。最高の低級映画。それが「パルプ・フィクション」だ。