『土曜日』にのみ出会える、素敵な仲間と美味しい料理!!
『洋食のねこや』は、一風変わった洋食食堂だ。それは、普段は普通の洋食屋であるが土曜日のみ、異世界とつながり、人間ならざる者達が訪れる不思議な洋食屋だ。人ならざる者とは、勿論人間もいるが、体格が違う者、トカゲのような姿の者、獣のような姿の者と様々だ。そして、この店のウェイトレスは、『魔族』と呼ばれる種族で、他の者から嫌われている種族だ。 しかし、『洋食のねこや』では、彼女を疎む者はいない。異世界の者達は、こちら側の料理を知らない。異世界の者にとって、こちら側の、人間が普通に食している料理は未知の物なのだ。レモンを浮かべた氷水でさえ珍しいらしく、とても美味しそうに飲み干す。
ある時、エルフの女性から「肉も魚も、乳も卵も入っていない料理があるならそれを」との注文があった。店主はこちら側の人間ではあるが、料理の腕は良く、洋食だけではなく、和食や中華料理、果てはパフェなどのデザートまでも作る事が出来る。 しかし、この『肉も魚も、乳も卵も入っていない料理』という、食材の殆どを使わない料理などあるのかと思ったのも束の間、店主は鉄板で美味しそうに湯気を立てる、『トウフステーキ』を作ったのだ。確かに『トウフステーキ』なら、条件を満たしている。トウフステーキ用のソースに使うポン酢も海草を使用しており、添えられているのはライスで、エルフの女性は、最後は大満足で帰って行った。実は最初は店主を困らせようとして出した注文だったのだが、料理に対する勉学心に目覚めたようだ。この作品に出てくる料理はどれも美味しそうだ。
そして、料理に使われている野菜等が分からず、自分達が親しんだ野菜に近いものはその名で読んだり、生クリームを『雲』、アイスクリームを『雪』と例えたりする者もいる。知っているのに知らない料理、そんな不思議な感覚に出会える『異世界食堂』を、是非一読してみては如何だろうか?