一味違ったミステリーアニメ
ミステリー作品と言えば、怪事件が起きて探偵役が登場し謎を暴く、という流れが定番である。しかし、この虚構推理という作品はその定番の流れをとらず、主人公たちが起きた事件に対し虚偽の真相を作り上げるというものとなっている。全三巻出版されている同名シリーズでは、主人公で怪異から「知恵の神」と崇められる少女の岩永琴子と、不死身の体を持つ桜川九郎が、人間社会の中で起こる怪異がらみの難事件を解決していく。本作品は第12回本格ミステリ大賞を受賞したその第1作「虚構推理 鋼人七瀬」をアニメ化している。当然のように存在する怪異と、人間社会の間を取り持ち、お互いの秩序を守るため主人公たちがどう人間を納得させていくが本作品の魅力となっている。他にも、岩永が恋人である九朗が元カノと交流することを根に持ったり、九朗の気を引こうとする姿が可愛らしい。話が進むにつれて事件解決の障害となる諸問題が発生していくだけでなく、2人の距離感や周りの人間関係、過去が明かされていくため驚きの連続となろう。終盤にかけて岩永が「鋼人七瀬事件」の収拾を図るために、事件から考えられる四種類の虚構でできた推理を提唱していく過程は、どれも説得力があって彼女の聡明さに驚くほかない。