愛しのアイリーン

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愛しのアイリーン
9

役者の演技に感情移入が止まらない

ある田舎町に親と同居する岩男が、フィリピン人妻をもらい、そこから始まる波乱万丈の物語。
実際の内容として、見ていてあまり気持ちの良くなるものではありません。1990年代の漫画が原作になっていますが、「外国人妻」「地方の少子高齢化」など現代にも通じるテーマが含まれています。
安田顕演じる岩男は、パチンコ店スタッフで親と同居する独身。恋愛経験は少ないが、性欲の強いことが明らかに分かります。あることをきっかけに、フィリピンの嫁探しツアーに大金を払って参加し、ヤケになってアイリーンという若いフィリピン人女性を妻にします。
結婚したことで妻という性行為相手をゲットした岩男と、家族への仕送りという見返りを確保できたアイリーン。当初ふたりは言葉も通じるわけなく、アイリーンも夜の誘いを頑なに断っていました。義母のひどい扱いもあり、日本に連れて来られた外国人妻の孤独がひしひしと伝わってきます。
ところがある事件をきっかけに、二人の心が通じ合います。

まず特筆すべきなのが、役者の配役とその演技力です。各々の役者の力量と(良い意味での)癖が配役に生かされていると感じました。また、演技力に関して、良い演技・悪い演技の判断は、観る側の好き嫌いに左右されるところが大きいですが、個人的に登場人物に嫌悪感を抱かされるとかなりのものだと思っています。今回では、岩男の母役木野花と安田顕には嫌悪感しか抱けなかったので、役作りをしっかりされているなあと感じました。
また、昔、「良い映画にはエロと暴力の両要素が含まれている」と聞いたことがあります。(ちょっと古臭い考えかもしれないですが‥)この作品にはその2要素がガッチリとあてはまっていました。現実社会に存在する、しかし私たちが見えにくいところにある問題たち。それらの問題、というより日常を描いた泥まみれの人生讃歌のような作品でした。