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圧倒的な質量と客観的目線で描かれた或る闘争
1971年から1972年にかけて、日本の新左翼組織・連合赤軍が起こした一連の事件を丹念に描き起こしたのが本作です。
登場人物は全員仮名ですが、内容はほぼノンフィクションです。
有名な「浅間山荘事件」を含め、そこに至るまでにすでに彼らが起こしていた凄惨な同志リンチ殺人事件が、順を追って緻密に描かれています。
しかし事件だけではなく、そこに表現されている若者たちの何気ない日常会話や恋愛模様、理想の革命への陶酔、閉塞感、そして暴力への衝動等は、決して自分と異なる人間たちのものではないことがうかがえます。
目を覆いたくなるようなシーンもありますが、ナレーションや説明が多めで、作者が意図して作品(事件)と距離を置いているのがうかがえるような、淡々とした描写です。
作者はデジタルで作品を描いており、強弱のない無機質な線も、極限状況における集団と個のたどる運命を客観的に描くのに功を奏していると思います。
涙を流しながら語られる闘争や理想、殴ることで達せられるという総括も、読者には恐ろしいほどの空虚なものにしか映らず、それこそがこの事件の真実だったのでしょうか。
事実に即しているので結末が分かっているにも関わらず目を離せないのは、圧倒的な情報量とともに重い題材を描き切った作者の力量ともいえるでしょう。
膨大な資料や事件当事者へのインタビューを経た上で創られたこの作品は、連合赤軍事件をマンガで分かりやすく知ることの出来る最適な好材だと思います。