最高に切なく爽快な物語
「音楽で人生は変えられる」と言い切りたくなるような、そんな映画。そして、歪んだ愛も一途な愛も、ぜんぶ「愛」なんだと、そんなクサいセリフを言いたくなるような映画でもある。
『はじまりのうた』は、一躍有名人となった彼氏に振られた主人公の“グレタ”と、家族や会社からも煙たがれる元名プロデューサー“ダン”が繰り広げる物語だ。
この映画は、彼氏に振られ落ち込んでいるグレタが、ギター1本を片手にバーで歌うシーンから始まる。
その切ない歌声に魅了されたダンがグレタをスカウトし、ギターやバイオリニストなどを仲間に引き入れていく。ギター1本の弾き語りからどんどんボリュームアップしていく様子には鳥肌がたった。
とくに、電車が通る地下鉄のホームで歌ったり、路地裏の子供たちをも仲間に入れて歌ったりする様子には感動する。
どの曲も本当に良い曲ばかりで、映画を見終わったあとに映画の中で作られた音楽を購入したほど。
さらに、グレタとダンがお互いのプレイリストを聞き合いながら、夜の街を散歩するシーンにも、ドキドキが止まらない。
「この曲は初めて恋人ができたときに聞いていた曲」だとか「この曲は失敗したときになぐさめてくれた曲」だとか、誰しもきっといくつかの思い出の曲があるだろう。
そんな気恥しい思い出が詰まった互いのプレイリストを聞き合うのだから、言葉では表現できない2人の間柄が垣間見える。
『はじまりのうた』は、音楽と愛を、言葉なくして表現した、最高に切なく爽快な物語だ。