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最高の癒やしであり、極めて巧みな「日常もの」
田舎に住む少女4人が家族や友人とともに沖縄旅行へ行く。地元の女の子と出会い、島を案内してもらう。あらすじといえばこの程度で、伝説の秘宝を探しに行くわけでもなければ、異界から来た女の子と出会うわけでもない。多分、ネタバレをされてもほとんど影響がない普通すぎる物語だ。
「そんな作品つまらない」と思うかもしれないが、なにも起こらないことが最高に癒やされる。癒やしを求めている人にこそおすすめの作品だ。
また、単調な物語だからこそ随所での演出力の高さは舌を巻くものがある。特に、ほかのアニメ作品ではほとんど見ることがない、大胆で思い切った「独特の間」がすごい。この間のとり方は、熟練のコントや漫才に通じる笑いの起こし方だ。
そのほか心理描写も丁寧で、まるで自分も旅行をしているかのように「誰もが感じたことのある、旅行中の喪失感」を追体験できる。とはいえ、そこにも露骨に涙を狙いにいく今生の別れなどはない。旅のなかにありふれている日常的な別れなのだ。
作画も映画作品だけあって一切の手抜きがなく、沖縄の美しい自然の風景が丁寧に描かれている。下手な芸能人の沖縄で行われるバラエティ番組などよりも、よほど沖縄へ行きたくなるはずだ。