プリキュア15年の集大成、かつての子供たちへ涙のエール
本作は15周年を迎えたプリキュアシリーズにおいて、通常春に上映される複数の作品からプリキュアたちが集合して悪を倒す所謂「オールスターズ」系作品を秋に改めて公開した映画です。
歴代プリキュアたちの記憶と能力を吸収し使いこなす事が出来る謎の存在「ミデン」に襲われる「HUGっとプリキュア」の面々。記憶を奪われたプリキュアは赤ん坊の年齢にまで小さくなり共に戦った事もすっかり忘れてしまいます。
独り追い詰められる「キュアエール/野乃はな」。そのピンチを救ったのは初めてプリキュアに変身して悪と戦った「キュアブラック/美墨なぎさ」と「キュアホワイト/雪城ほのか」。彼女たちもミデンに襲われ仲間の記憶を奪われつつも、はなたちのいる世界に現れ辛くもミデンを撃退しますが、赤ん坊になりすっかり気弱になってしまった他の仲間はそれぞれがバラバラな行動ではなとなぎさを悩ませます。さっきまでピクニックを楽しみ、笑いあっていたのに今は自分を拒絶しこの場を逃げ出そうとさえしている。
プリキュアという作品で度々出てくる「絆」、それがミデンという記憶を奪う「敵」によって断絶してしまう描写はとてもショッキングで悲しみに溢れています。
それまでも仲間がバラバラになって行動するストーリーはありましたが、「一緒にいるのに自分が分かってもらえないもどかしさ」をここまで強烈に描いたのは無かったように思います。後に「HUGっと」と「ふたりは」の2チームは記憶を取り戻しミデンを追い詰めるのですが、彼の正体である古いカメラ(フィルムも無く使用もされていない)の楽しい・嬉しいといった感情を知らず他人から奪う事で自分に「焼き付けようと」してもなお虚しさしか感じない姿にまた胸を撃たれます。それはキュアエールも同じで、彼女は相手の気持ちになって考え理解し受け入れようとします。
思えばプリキュアの根底には相手の倒すことそれがメインでは無く、普通の生活を脅かす者に立ち向かう姿勢が描かれておりたとえそれが敵であっても理解しようと努力し受け入れる。それが一貫して描かれています。本作でもそれは余すことなく表現され感動を誘うのです。