余命わずかの彼女から伝わること
『君の膵臓を食べたい』という、どこか異常さを感じるタイトルからは想像できないとても爽やかな作品です。主人公の男子高校生が拾った一冊の日記帳からストーリーが始まっていきます。
その日記帳は、クラスメイトの人気者山内桜良の物で、膵臓の病気によって余命を宣告された桜良の気持ちを知ってしまってことから彼女のペースに巻き込まれていきます。
彼女は自分の運命を受け入れても笑顔で明るく残りの生活を楽しみ、わずかな命を精一杯生きているのです。主人公は彼女に巻き込まれながら、半ば無理やり一緒になって彼女の死ぬまでにやりたいことを叶えていきます。他人の事になどさほど興味を示さなかった主人公の気持ちの変化や、成長と共に病気に立ち向かう人間の生きざまとの両方を描いています。
彼女のパッと明るい笑顔に隠された真の気持ちに胸が締め付けられ、そんな思いテーマにも関わらず、光輝く明るいシーンが目に残ります。
残念ながら事件という形で彼女の人生の幕は閉じますが、彼女が周りに残していったものは決して意味の無いものではありません。
主人公は数年たって気が付いたこともありますが、何年かかってもすべてが必要な時間であるというメッセージを受け取ったような余韻が残る作品です。