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浅野いにお『素晴らしい世界』の世界観
浅野いにおの描く独特な描写と、日常生活を思わせるような世界観が彼の作品に没頭してしまう1つの魅力だと思う。
「素晴らしい世界」は全2巻で完結している短編集。1巻で登場した短編が2巻で完結するという非常に面白い作品である。作品を読んで思うことは人それぞれであるが、私はこの作品のテーマは「生きる」ことについてではないかと思う。つまらない事や、姿の見えない鬱蒼とした蟠り、世間からすればたいしたことのない悩みはひとりで抱えるには大きな絶望であったりする。そういった感情とも時には隣り合わせて生きて、生活をしていく。
この作品に登場してくる彼らは悲壮感に溢れ、どん底から精一杯に生きようとしている。彼らの生きるその世界は、非現実的な部分がありながらも、その全てがどこか私たちの日常生活に寄り添った描写で、浅野いにお作品のような生活をしたいと思っている読者はわたし以外にもいるのではないか。初めて浅野いにおのを読む人にも短編となってるので、比較的読みやすくておすすめの作品です。