ただの超能力マンガじゃない
主人公の影山茂夫(通称モブ)は、霊が見えたり、超能力を持っていたり、除霊できたりと、特殊な能力に長けているが、通称の通り日常生活では目立たずパッとしない存在。ここまでなら超能力漫画にありがちな設定なのだが、最大の特徴は主人公が自身の超能力を使う行為や「思った通りにする」ことに抵抗を感じて葛藤する姿がメインに描かれている点だ。
それだけ特殊な能力があれば霊媒師にもなれるし、事実モブは師匠の霊幻の元で超能力を活かしてバイトをしている。しかし彼は毎度「自分の気持ちに素直になること」に恐怖や不安を覚え、もしこの能力を悪用してしまったらどうしようとまで不安にかられる。そんなモブは、超能力者ではあるが、人間らしさに溢れた、良い意味で普通の少年である。だからこそ、読者は人より長けた能力を持っていても自分では自信が持てずに悩むモブに自身を投影して共感しているのだと思う。
また、どんなに特技があっても、自分でそれを認める自己肯定がそんなに上手くいかない姿もモブの言動から伺え知ることが出来る。世の中どんなにポジティブに生きろと、自己肯定感を持てと言われても、上手く物事は進まない。そんな現実を日常生活の学校生活の冴えないモブ的存在がよりリアリティを増して読者に訴えかけてくる。しかし、そんな心境の中でも自分を変えようともがき葛藤するモブに勇気や希望を持って読者は励まされる。ただの超能力マンガじゃない、その理由はもっと現実的で残酷で、でも人間くさくて温かさも感じられるヒューマニズムを秘めたマンガだからだ。