絵画のように歌い上げる歌手
アニメーション作品に親しんでいる層であれば一度は聞いているであろう、そして一度聞いたなら忘れる事は出来ない世界観を歌い上げる歌手・KOKIA。
20周年という時間を掛けて磨き上げられた、祈りを込めて歌い上げるような力強くも繊細で透明感のある歌声は今なお輝きを増している。
ハスキーさを感じる力強さをベーストーンとしながら、伸びやかさしなやかさを感じさせる高音域まで駆け上がる安定した音域の広さがその魅力の根底を強く裏打ちしている。その歌唱表現によって描き出される世界観の広さが彼女の歌声を更に魅力的なものとしている。
あるアニメーション映画のオープニング主題歌となった曲では、まるで異世界の言語を紡ぐかのような不可思議な言葉を巧みに操る事で旋律を奏でる音楽に仕上げているが、それはあたかも荘厳な神話が黙示されている場に居合わせるかのような独特の世界を描き上げている。他方、別の曲では何気ない言葉といって差し支えのないような、とても平易で柔らかな言葉を、軽やかできめ細やかにも関わらず圧倒的な力強さと熱を感じさせる、生命力に溢れた人間の姿を描き上げている。その表現力の多彩さ、而して同時に「KOKIA」という変わらない軸を常に感じさせる歌声と歌に込められた意思が彼女の魅力である。