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タイトルなし
結成30周年を迎えてのニューアルバム「REBROADCAST」は、pillowsが過去の音源を正当に進化させたような非常に充実した内容だった。「再放送」を意味する「REBROADCAST」をテーマとしたように、メロディーや歌詞の随所に過去の作品のオマージュが散りばめられていて、ファンにとっては聞くたびに発見があり、繰り返し飽きがなく聞くことができる。
過去楽曲が使用されていた映画「フリクリ」新作2本への新曲提供や、最近のテーマである過去のアルバムにフォーカスしたライブの構成など、集大成に近い活動をしていたpillows。その中で、徹底的に自分たちの楽曲を再研究し良い部分を煮詰めたような新曲の数々は、結成30周年目にしてとても器用でスマートなバンドに仕上がったなという印象を感じさせる。そんな器用さの中でも、いやらしさを感じず情熱的な進化を遂げたように感じさせる楽曲に仕上がるのは、メンバー全員がそれぞれが過去の自分たちを非常に大切に思いながら、さらに先へと進もうするこだわりやバンド自体への強い思いから来るのだろう。過去の苦悩や成功の全てを含めて新しい価値を作り出す真のアーティスト性を垣間見ることができるので、ぜひ過去のアルバムと比べながら聞いて欲しい。