推せる悪役とめぐる冒険ファンタジー
この映画は少年ジムが、隠された財宝が眠る“トレジャープラネット”に向かう地図を偶然手に入れ、船で出会ったサイボーグと交流を深めながら航海するという話です。
2つのおすすめポイントに焦点を置いてレビューしていきます。
ポイント1は原作との違いです。
トレジャープラネットは小説「宝島」を原作に作られています。ディズニーでは過去に実写映画も制作していますが、原作・実写作品と大まかなあらすじや登場人物などは原作と変わりません。しかし大きな違いは物語の舞台が宇宙になっているという点です。
主人公たちが住んでいるのは宇宙にある惑星で、財宝が隠されている場所も島ではなく惑星。航海中に遭遇するのは嵐ではなく超新星爆発やブラックホールというのが面白いポイント。
そしてトレジャープラネットでは原作に登場する人物・生き物がバージョンアップして登場します。「義足の男」はサイボーグに、海賊の相棒であるオウムはスライムのような不思議な生き物、宝島で出会う老人はロボットになっているところも見逃せません。
ポイント2は憎めない悪役が出てくること。
この映画に出てくるヴィラン(悪役)はサイボーグのジョン・シルバー。生涯をかけてトレジャープラネットを探し続け、誰よりも財宝を手に入れたいと願っていたはずの男が少年ジムと出会い、彼に愛着がわいてすっかり丸くなってしまう。物語が進むにつれて彼の心境が変化していくところが見どころです。
特におすすめなのは物語の中盤、ジョン・シルバー率いる海賊たちが本性を現しジムたちとの戦いが本格的に始まるシーン。ジムを打てる絶好のタイミングが来ても、銃を構えたままで打つことができずに逃がしてしまいます。そしてクライマックスのトレジャープラネットから脱出するシーン。悲願である財宝をようやく手に入れられるという時にジムのピンチに気付き、財宝を諦めてジムの救助を選びます。どちらのシーンも初めは悪人らしい表情をしているのに、急に迷い始めて歯を食いしばりながら葛藤する姿に見ていて愛おしくなってしまいます。「俺はなんてバカなんだ…!!」と言いながらも結局ジムを守ってしまうところが何とも言えません。
「トレジャー・プラネット」が公開されたのは2002年。古き良き手描きの作品と鮮明で美しいフルCG作品の中間とも言える世代の作品。両面のいいところを併せ持つ映像を楽しむことができます。原作との比較、キャラクターの愛らしさと合わせて映像の良さも味わえる魅力たっぷりな映画でした。