『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』の考察
この映画のキーワード、「キャメロット」とは、英国の伝説のアーサー王と円卓の騎士らが住んだ都で希望や勇気を象徴する場所、そして、アメリカではケネディ大統領の時にこの伝説を取上げたミュージカルがもてはやされたということで、華やかで魅力的なケネディ大統領の時代をさすだそうだ。
この映画の妙味は、ジャクリーンは何故、最後まで執拗に夫ジョン・F・ケネディの葬儀での歩いての行進に拘ったのか、それを読み解くことだと思う。それは、単純な虚栄心だと考えることもできるが、そうしてしまうとこの映画の味わいは薄い。彼女のモチベーションの中にはもちろん虚栄心もあったと思うが、それを超えて彼女を動かしたのは、前大統領ケネディの妻、元ファーストレディとしてこの国に対して行うべきことなのではないか。それは、即ち、多くのことが志し半ばだったとはいえ、国民の希望となった大統領がいて、そういう時代があったということを、この国の人々の記憶とこの国の歴史に刻みつけること。そして、そのためには、同じく大統領在任期間中に暗殺された、奴隷解放、南北戦争の勝利という偉大な事績を持つリンカーンのものと並び語り継がれるような葬儀にすることが必要だったのだ。そして、彼女は、それを自分の行動原理とすることで、悲しみと混乱と不安と屈辱の数日間を必死で生き抜くことができたのだと思う。