登場人物はほぼ女性。嫌な人の出てこない優しい癒しの映画「きみの色」
テレビアニメ「平家物語」にハマり、その山田尚子監督作品ということで注目していた「きみの色」。そして脚本の吉田玲子さんも「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」など好きな作家さんなのでふたりの組み合わせに期待して鑑賞。ただ「映画 聲の形」のときはだいぶメンタルをやられてしまったので、今回は少しビクビクしながらの鑑賞となりました。
なんと優しくて嫌な人の出てこない素敵な世界なんでしょう!キリスト教系の女子高が舞台ということもあり、みな善人で、おそらく背景には複雑な事情も抱えつつもそれは表面化せず、見方によっては都合の良いファンタジーだという批判もあるでしょうがそれはそれ。映画を観て心地よい時間を過ごせるならそれが一番。
長崎という土地柄も相まって礼拝堂や古い教会など、宗教的なモチーフがたくさん出てきてそれだけで心が洗われる気分になります。トツ子の天然だけど真っ直ぐな性格も可愛いし、付かず離れず見守ってくれるルームメイトたちとの関係もよい。クールビューティーなきみとの関係も、ともすれば百合になってしまいそうなところを絶妙におさえ、かといって唯一の男子ルイとも恋愛には発展させない手腕はお見事。すべてを恋愛に帰結させがちな風潮に抗い、あたたかなストーリーに仕上げたのはさすがとしかいいようがありません。
ライブシーンは少しありきたりで冗長な感じも否めませんが、それよりもそのあとのトツ子がジゼルを踊るシーンが圧巻でした。決してスタイルがいいとは言えないトツ子の、うまくはないけれど心から踊りたいと思って踊ったジゼル。あの中庭のシーンの実写と見まごうような動きがこの映画の最高の見どころだったと思います。
とにかく、おだやかで優しい気持ちになりたい方におススメの作品です。