Official髭男dism / オフィシャルヒゲダンディズム / ヒゲダン

『Official髭男dism』とは、藤原聡(ボーカル)、小笹大輔(ギター)、楢﨑誠(ベース)、松浦匡希(ドラム)の4人で構成される日本のバンドである。愛称は「ヒゲダン」。
バンドは2012年に結成。2018年に1stシングルである「ノーダウト」でメジャーデビューし、以降「Stand By You」や「Pretender」、「イエスタデイ」等ヒット曲を売り出している。2019年には紅白歌合戦に初出場し、「Pretender」を披露した。
ドラマやアニメ、映画の主題歌を担当することが多く、特に10代~20代の若年層から絶大な人気を集めている。親しみやすい楽曲でありながら、個性を前面に出しており、特に言葉や韻を巧みに使った歌詞が特徴的である。また、楽曲のストーリーとしてはラブソングが多く、多くの人が共感しやすい点が人気を集める要因の一つである。

omiyasan77のレビュー・評価・感想

Official髭男dism / オフィシャルヒゲダンディズム / ヒゲダン
10

日本語の魔法を楽しんでください

彼らの曲を初めて聴いた時のことはよく覚えてない。ただ、彼らの曲を初めて聴こうと思いたった時のことはよく覚えている。そしてその衝撃も、いまだによく覚えている。
これまた、どのような内容だったかよく覚えていないが、彼らが取り上げられていたニュースをたまたまSNSで目にした。それまで彼らの名前は耳にしていたが、曲は聴いたことがなかった。
90年代のJ-POP全盛期を知っている自分はボカロ以降の世代にあまり魅力を感じず、そしてテレビがアイドル全盛期となってしまってからはすっかりと音楽番組からは離れてしまっていた。もともとアウトドア派でもないのでロキノン系にも今ひとつはまれず、耳にするのはアニメのOP/EDばかりとなっていた頃だった。
J-POPは洋楽とは違って、メロディーを楽しむ以外にも「歌詞」を楽しむものと、私は思っているところがある。BGMとしては洋楽のメロディーは好ましい物も多いが、歌詞となるとどうも薄っぺらい。その点J-POPは日本語という複雑な言語体系が作り出す、見えている言葉以外の意味が込められる歌詞を聞き解くのが大好きだった。言うならば「日本語の魔法」がありとあらゆるところに散りばめられた、そんな曲が大好きだった。
ところがそんな日本語の歌詞も、アイドル全盛期時代に入ったあたりから、どうも薄っぺらくなってきたように感じていた。「好きだから」とか「愛している」とか、そんなストレートな単語が並べられる曲が目立ってきた。
時代の移り変わりなのだろうか、歌詞の面白みもなくなってきたJ-POPに段々と興味が薄れ、必然的に最新の曲にはどんどんと疎くなり、そして懐古的に昔のヒットソングを聴くことが常となっていた。

そんなところに出会ったのが、先のニュースである。ここまで取り上げられるほどの人気があるのならば、1度聴いてみよう。そう思い立ったことを今でも覚えている。
そうやって音楽配信サイトから、彼らのプレイリストを探してみると、あっさりと見つかった。特に期待もせず、というよりも特に何も考えることもなく、私はプレイリストの再生ボタンを押した。
ここで流れてきたのは「「115万キロのフィルム」だった。
自分で選んだわけではない。音楽配信アプリによって作られたプレイリストが選んだ曲だ。
そして私はこの曲に思いもよらぬ体験をさせられる。
ボーカルのワンフレーズの後、すぐに奏でられるAbM7から始まる心地の良いピアノの音。
新しいはずなのに、なぜか懐かしく感じるメロディー。そんな感覚を一瞬に脳内に流し込まれながら、やがて訪れるドラムやギターのポップな音。まだイントロ部分なのに、なんだか訳の分からない感覚を覚える。一言で言うならば「え、何この曲?」としか言い表せないほどの衝撃だ。
そして何よりも衝撃を受けたのは、このとてつもない音のマジックに惑わされているほんの20秒の間に紡がれる歌詞だった。それはまさに、90年代に慣れ親しんでいた「日本語の魔法」が詰め込まれた歌詞そのものだった。
この曲をきっかけに、気が付いたらプレイリストを最後まで聴き入っていた。彼らの描くメロディーもさることながら、天才的な歌詞にもう心を掴まれていた。誰が「相思相愛」というタイトルから失恋曲を連想するのか?
「Subtitle」なんて言葉から、どうやってあのようなラブソングが生まれるのか?
全ての曲が驚きと感動の連続だった。
日本語の魔法で紡いでいく歌詞を創り上げてくれる彼らにも、そしてそれに負けない独特のメロディーも、本当に今の時代に出会えてよかった。そう思えたバンドだった。