ホラー映画の事件の発端は登場人物の自業自得だけど…ひどかったなあ
ゾンビパニック映画、『バタリアン』シリーズの3作目です。
主人公の青年カートは、軍事施設で働いている父親のセキュリティカードをちょろまかして、恋人のジュリーと施設に侵入。そこで、父親が怪しいガスを使って、ゾンビで生物兵器を作る実験に関わっている現場を見てしまいます。その後、カートは父から引っ越しの話をされますが、カートは拒んでジュリーとバイクで夜の街を駆けていきます。しかし、大型トラックと衝突してジュリーが死んでしまいました。この時、ジュリーがカートの下半身を触って、2人はノーヘルメットでふざけながらいちゃついていました。なので、書き手はジュリーが死んだショックよりも「わき見運転と同じやんけ」と、恋人の死を嘆くカートに同情できませんでした。
カートは父のカードで再び施設に侵入し、ゾンビの実験で使ったガスをジュリーに浴びせて、ゾンビになるとは知らずにジュリーを蘇らせてしまいます。2人は施設内の兵士に見つかり、父親にも不法侵入とジュリーがゾンビになったことがバレて、追われる身となりました。
この物語は、人間を食べたいけど頑張って抑え込む(結局食べちゃったけれども)ジュリーと、ジュリーがゾンビになっても逃亡生活をしながらジュリーへの愛を貫くカートのラブストーリー。しかし、書き手にはラブロマンティックよりも、登場人物や軍事施設に対して呆れる気持ちのほうが強かったです。ジュリーに無残に貪られた死体や他のゾンビたちの特殊メイクの作りこみ具合に、ジュリーが食欲を自傷行為で抑え込んだ結果、ウルヴァリンよりも全身が鋭利になった姿を見て、当時の制作陣の残酷な表現の技術の高さに驚嘆しました。けれども、安易に危険なものに手を出したカートの浅はかさと、父親の重要機密を抱えて働いている意識の低さ、軍事施設のチョロすぎるセキュリティという、これらのツッコミどころに対して興ざめてしまい、登場人物たちの感情で心を揺さぶられませんでした。終盤に別のゾンビに噛まれてしまったカートが「2人だけの世界へ……」と、生物焼却炉の炎の中へジュリーと入って焼死するシーンは、悲哀で涙が零れたりなどせず、「まあ、そうするしかないかあ」と、冷静に眺めていました。