toeの新しい境地
toeというバンド名を聞いて、おそらくピンとくるのは音楽を普段かなり聴き込む人だけだろう。
彼らは日本のバンドではあるが、国外からも圧倒的な支持を集めている。メンバー全員がtoe以外にも様々な活動をしていることでも知られているが、そんな彼らが2018年、完全なるオリジナルミニアルバムを世に放ったのだ。
言わずと知れたロックバンド・ブラックサバスのカバーは無論かっこいいのだが、私自身が最も感銘を受けたのは『F_A_R』という曲だ。
ピアノによる単音のフレーズから始まるイントロは、なんとも言えない不気味さと怖さを醸し出している。
そして次に来るのはVo.Gtの山㟢氏による切ない歌声だ。
その歌声は日本語のリリックに乗せられているのだが、今までのtoeらしくてtoeらしくもない不思議なものとなっている。
とにかく日本語の要素が強いのだ。今までは英語で綴られる歌詞が大半だったのだが、圧倒的日本語の分量。
「メロディを殺シタ 手を誓う 見栄の美を模した LIEを割く」
これがサビの歌詞である。日本語のもつ抽象的さとヒップホップの持つ韻を踏むという行為をミックスしている歌詞だと言える。
これにより歌詞がいったいどういうことなのか?というオーディエンスの好奇心を掻き立てることも出来るし、抽象的にすることにより歌詞の持つ状況や世界観を固定化しないため、より多くのオーディエンスを感情移入させやすい。
まさにこの曲は限られた時間の中で表現が持つ可能性を示していると言えるのではないか。