巨人による血沸き肉躍る戦い。
1966年に公開された『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は、1965年に公開された『フランケンシュタイン対地底怪獣』の続編ともいえる立ち位置であるが、明確なつながりはない。例えるなら『仮面ライダークウガ』と『仮面ライダーアギト』のような関係である。
フランケンシュタインの細胞から誕生した「サンダ」は、研究所で女性研究者の戸川アケミにより育てられたが、逃げ出して行方知らずとなった。
それからしばらくして海で船や人間が襲われる事件が多発し、世間はフランケンシュタイン=「サンダ」の仕業と考えるようになる。世間やマスコミからの疑念を払しょくするため、戸川らフランケンシュタイン研究者は一連の事件の捜査をすることになった。そこで知ったのは海のフランケンシュタイン「ガイラ」の存在である。
「ガイラ」は凶暴な性格で人を捕食し暴れまわった。事態を収拾するため、自衛隊は「ガイラ」駆除作戦を実行し、新兵器の「メーサー殺獣光線車」で攻撃を開始。自衛隊により「ガイラ」を追い詰めたところ、そこへもう一体のフランケンシュタイン「サンダ」が現れたのだ。「サンダ」こそ戸川が愛情深く育てたフランケンシュタインだった。
「サンダ」は同胞である「ガイラ」を庇い山奥で介抱し、その際人を襲うことをやめるように「ガイラ」へ説得する。だがその願いは叶わず、「ガイラ」は欲望のままに人を捕食するのだった。「サンダ」はそんな「ガイラ」へ怒りを露わにし、攻撃するのだった。
今ここに巨大なフランケンシュタイン同士の壮絶な戦いが幕を開く。
『新劇の巨人』が好きな方なら「おっ!」と思うシーンが多数あり、「ガイラ」の人間を襲い、捕食するシーンを楽しめるのではないだろうか。「ガイラ」の水中から漁船をのぞき込むシーンや、空港で女性を執拗に追いかけ捕食するシーンは、ショッキングでトラウマもの。空港で女性が捕食され命を落としたシーンは、遺体ではなく散った花を見せる演出に感嘆するばかりである。
戦争を経験した世代が作成した作品だからか、劇中「ナチスドイツがパリを占拠して~」という時代を感じる台詞があり、歴史的な見方もできるのではないだろうか。
東宝特撮のメカニックも見どころ。劇中登場した「メーサー殺獣光線車」は、1972年公開の『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』や、2002年公開の『ゴジラ×メカゴジラ』にも登場するほどである。
クライマックス、東京湾で、まさに肉を断ち骨を切るような戦いを繰り広げる「サンダ」と「ガイラ」。そこへ突如海底火山が噴火し、2体のフランケンシュタインは海底火山の業火に飲み込まれていき、そこで映画は幕を下ろすのだった。突然の終わりに驚くかもしれないが、これがこの作品の終わり方である。
この終幕に不満を感じるかもしれないが、想像力豊かな方なら、映画の結末までの行間を脳内で補完するのも面白いかもしれない。筆者は自衛隊が海底火山付近に海底機雷を設置し、2体のフランケンシュタインを誘導し爆破させたと想像した。
グロテスクさ、ホラーテイスト、ミリタリーテイストが詰め込まれ、その一方唐突な終わりというB級ぽさが本作の見どころである。